2023年6月FOMCプレビュー~今回の注目点を整理する

2023/06/07

2023年6月FOMCプレビュー~今回の注目点を整理する

    • ジェファーソン理事など複数のFRB高官の発言を受け6月会合は利上げ見送りとの見方が優勢に。
    • ただ米景気は底堅くドットチャート年末中央値は5.375%に上方修正で年内追加利上げ示唆へ。
    • パウエル議長の政策判断に関する発言も注目、リスクは物価抑制遅延と事後的な大幅利上げか。

ジェファーソン理事など複数のFRB高官の発言を受け6月会合は利上げ見送りとの見方が優勢に

米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月13日、14日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催します。そこで以下、今回のFOMCにおける主な注目点を整理していきます。まず、政策決定について、直近のフェデラルファンド(FF)金利先物市場では、利上げ見送りとの見方が優勢になっています。これについては、すでに複数のFRB高官が6月会合での利上げ見送りを示唆しており(図表1)、その影響によるものと推測されます。

特に、ジェファーソン理事は5月31日、「次回会合(6月会合)で利上げを見送ることにより、FOMCはより多くのデータを確認してから、追加的な金融引き締めの度合いについて決定できるだろう」と述べました。また、「FRBウオッチャー」として知られる米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのニック・ティミラオス記者も6月1日、ジェファーソン理事の発言を「注目すべき」と指摘しています。

ただ米景気は底堅くドットチャート年末中央値は5.375%に上方修正で年内追加利上げ示唆へ

このようなFRB高官や著名FRBウオッチャーからのメッセージにより、6月会合での利上げ見送りは、ほぼ既定路線になりつつあります。ただ、米国経済に目を向けると、雇用は底堅く、消費もしっかりしており、住宅販売も持ち直すなど、景気後退(リセッション)の兆しはみられません。この点を踏まえると、6月会合で追加利上げが決定されても違和感はありませんが、FRBは信用条件の引き締まりの影響をかなり警戒している模様です。

なお、今回のFOMCでは、メンバーが適切と考える「政策金利水準の分布図(ドットチャート)」が公表されます。2023年末のドット中央値は前回(3月会合)、5.125%でしたが(図表2)、FF金利の誘導目標は現在5.00%~5.25%と、すでにこの水準に達しています。弊社では、利上げが6月会合で見送られても、年内はいずれ必要になると考えており、中央値は今回、5.375%に引き上げられる公算が大きいとみています。

パウエル議長の政策判断に関する発言も注目、リスクは物価抑制遅延と事後的な大幅利上げか

また、今回はFOMCメンバーによる最新の経済見通しも公表されますが、少なくとも2023年分には景気の底堅さが反映され、実質GDP、個人消費支出(PCE)物価指数、食品とエネルギーを除くコアPCE物価指数の伸び率は上方修正、失業率は下方修正される可能性が高いと思われます。そして、パウエル議長の記者会見では、政策判断はデータ次第とする従来姿勢の変化の有無に加え、信用条件の引き締まりに関する最新の見解が注目されます。

6月会合について、利上げ見送り、ドットチャートで年内1回の追加利上げ示唆、それを踏まえた経済見通しの修正、という結果なら、市場には「無風」とみています。ただ、注意すべきは、FRBが信用条件の引き締まりを警戒するあまり、利上げによる物価抑制が遅れ、結果的に大幅利上げに追い込まれる状況となることです。この場合、株価の急落など市場の大きな混乱が予想されますが、現時点ではリスクシナリオと位置付けています。

 

(2023年6月7日)

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
市川レポート 経済・相場のここに注目   三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

このページのトップへ