先物市場が織り込むFF金利予想水準の変化について

2022/08/31

先物市場が織り込むFF金利予想水準の変化について

  • 先物市場のFF金利予想水準について6月14日、7月28日、8月10日、26日の各時点を比較。
  • 7月まで、利上げは短期間との見方で予想水準は低下、8月は上方修正も株高はしばらく続いた。
  • 先物市場で来年の利下げ予想は継続中、来月ドットチャート上方修正なら、予想の変化に注目。

先物市場のFF金利予想水準について6月14日、7月28日、8月10日、26日の各時点を比較

今回のレポートでは、先物市場が織り込むフェデラルファンド(FF)金利水準の予想について、ここ数カ月でどのように変化したか、確認していきます。具体的には、4つの時点を設定し、各時点の取引終了時点におけるFF金利先物価格から、将来のFF金利の予想水準を算出し、その変化を比較します。なお、4つの時点は、①6月14日、②7月28日、③8月10日、④8月26日としました。

①は、6月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、75ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)の大幅利上げを決定した前日です。②は、7月のFOMCで、同じく75bpの利上げを決定した翌日です。③は、7月米雇用統計発表(8月5日)を終えた後、7月米消費者物価指数の発表当日です。④は、パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)議長が、経済シンポジウム「ジャクソンホール会議」で講演した日です。

7月まで、利上げは短期間との見方で予想水準は低下、8月は上方修正も株高はしばらく続いた

まず、①において、FF金利は2022年12月が3.55%で、利上げのピークは2023年5月の4.06%、2023年12月は3.76%という予想でした(図表1)。次に、②をみると、2022年12月は3.22%で、利上げのピークは2023年1月と2月の3.26%、2023年12月は2.72%との予想です。つまり、先物市場は6月と7月の2度の大幅利上げを経て、利上げは短期間で終了し、来年早々には緩和が可能との見方を強めたと推測されます。

なお、①から②の期間、ダウ工業株30種平均は7.1%上昇しました。次に、③を確認すると、FF金利は2022年12月が3.43%で、利上げのピークは2023年4月の3.60%、2023年12月は3.15%という予想となりました。③は、雇用の底堅さとインフレのピークアウトの兆しが確認された時点でしたが、②よりもFF金利の予想水準は全体的に上昇しました。ただ、それでもダウ工業株30種平均は、②から③の期間、2.4%上昇しました。

先物市場で来年の利下げ予想は継続中、来月ドットチャート上方修正なら、予想の変化に注目

最後に④をみると、FF金利は2022年12月が3.56%で、利上げのピークは2023年4月の3.80%、2023年12月は3.49%という予想でした。パウエル議長の講演後、予想水準は③からさらに上昇し、2022年12月は、①の予想水準に戻りました。ただ、2023年以降は、①の予想水準に届いておらず、依然として2023年は利下げが見込まれています。なお、ダウ工業株30種平均は、③から④の期間、3.1%下落しました。

改めて、FOMCメンバーが適切と考えるFF金利水準の分布(ドットチャート)をみると、中央値で2022年末が3.375%、2023年末が3.75%で、2023年は利上げ継続という見方です(図表2)。最近のFOMCメンバーの発言を踏まえると、9月のFOMCでは、分布が上方修正されることも想定されます。実際にそうなった場合、FF金利先物市場の反応、とりわけ2023年の利下げ予想が消滅するか否かが注目されます。

 

(2022年8月31日)

市川レポート バックナンバーはこちら

https://www.smd-am.co.jp/market/ichikawa/index.html

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
市川レポート 経済・相場のここに注目   三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

このページのトップへ