東証プライム移行で664社が基準未達の意味すること
東証プライム移行で664社が基準未達の意味すること
- 東証の1次判定の結果、市場第一部上場2,191社のうち664社がプライム上場維持基準未達。
- ただ基準未達でも想定新市場への移行が可能となる仕組みがあり、過度に懸念する必要はない。
- 市場再編により、今後は株式の持ち合いや親子上場の解消が進み、合併の動きも増える可能性。
東証の1次判定の結果、市場第一部上場2,191社のうち664社がプライム上場維持基準未達
東京証券取引所(以下、東証)が運営する株式市場は現在、「市場第一部」、「市場第二部」、「マザーズ」、「ジャスダック」の4市場に区分されていますが、これらは2022年4月4日より、「プライム」、「スタンダード」、「グロース」という、3つの新しい市場区分へ移行します(図表1)。新市場への新規上場および上場維持には、厳格な審査基準が設けられており、特に、市場で実際に売買できる「流通株式」が重視され、その定義が見直されました。
東証は、6月30日の移行基準日におけるデータをもとに、全上場企業3,738社について、新市場区分の上場維持基準への適合状況を調べる1次判定を行い、その結果を7月9日に各社へ通知しました。東証によると、市場第一部に上場する2,191社のうち、約30%にあたる664社が新たに最上位となるプライムの基準を満たしておらず、また、全上場企業では、約26%の965社が移行先として想定される新市場の基準を満たしていませんでした。
ただ基準未達でも想定新市場への移行が可能となる仕組みがあり、過度に懸念する必要はない
上場維持基準が未達となった企業は、この後、追加報告を行い、2次判定を受けることになります。また、全上場企業は、9月1日から12月30日までの間に、自ら希望する新市場区分を選択し、申請することになります(図表2)。なお、仮にある企業が、希望する新市場区分の上場維持基準を満たしていなかったとしても、「上場維持基準への適合に向けた計画書」を提出すれば、経過措置が適用され、希望先への移行が認められます。
つまり、今回の1次判定により、移行先として想定される新市場の上場維持基準が未達とされた企業でも、想定市場への移行が可能となる仕組みが整備されているため、基準未達の社数をもって、市場への影響を過度に懸念する必要はないと考えます。なお、上場企業による新市場区分の選択結果は、2022年1月11日に、日本取引所グループ(JPX)のウェブサイトで公表される予定です。
市場再編により、今後は株式の持ち合いや親子上場の解消が進み、合併の動きも増える可能性
現行の4市場区分から新たな3市場区分への移行については、当分の間、緩和した上場維持基準が適用されるため、大きな混乱はないとみています。ただ、市場再編により、上場企業に要求されることが増え、複雑になったため、例えば、プライム市場に残ることのメリットとコストを熟考する企業も出てくると思われます。また、全体的には、株式の持ち合いや親子上場の解消が進み、合併の動きも増えることも予想されます。
なお、東証株価指数(TOPIX)は、2022年4月4日以降も存続するため、例えば、TOPIXに連動するパッシブ運用に大きな支障は生じないと考えます。しかしながら、流通株式時価総額が100億円未満の銘柄は、段階的にウェイトが逓減し、最終的に除外される可能性が高いため、これらの銘柄は株価への影響が予想されます。それでも、100億円未満の銘柄はTOPIX全体に占める割合は小さいため、TOPIX自体への影響は限定的と思われます。
(2021年7月13日)
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