原油相場の方向性
原油相場の方向性
- WTI原油先物価格は、世界的な景気回復期待を背景に、コロナ・ショック前の水準を3月に回復。
- 65~70ドルの価格帯上抜けには材料が必要だがIEAは今年の原油需要の見通しを上方修正。
- ただ、IEAはスーパーサイクルには否定的で、原油価格は70ドルを超えても上昇ペースは緩やかか。
WTI原油先物価格は、世界的な景気回復期待を背景に、コロナ・ショック前の水準を3月に回復
原油相場の今後の方向性を確認するにあたり、昨年のコロナ・ショック発生前後から足元までの動きを簡単に振り返ります。WTI原油先物価格は、2020年1月8日に一時1バレル=65ドル65セントの高値をつけた後、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的な景気悪化を織り込む形で、水準を切り下げる展開となり、4月には史上初めてマイナスの価格をつけました。
マイナス価格は、取引限月(げんげつ)交代のタイミングで、流動性が低下したことによる一時的な現象にとどまり、その後は各国の金融緩和や財政出動で景気は持ち直すとの見方が強まると、原油価格は上昇に転じました。夏場はおおむね40ドルを中心に揉み合いが続きましたが、11月の米大統領選挙後、米国の大型経済対策とワクチン政策への期待から、原油高に弾みがつき、2021年3月8日に67ドル98セントの高値をつけました。
65~70ドルの価格帯上抜けには材料が必要だがIEAは今年の原油需要の見通しを上方修正
このように、WTI原油先物価格は、すでにコロナ・ショック前の水準を回復していますが、コロナ・ショック前の高値(2020年1月8日の65ドル65セント)や、直近の高値(2021年3月8日の67ドル98セント)のほか、2019年の高値(4月23日の66ドル60セント)を踏まえると、65~70ドルの価格帯をしっかりと上抜けるには、相応に強い材料が必要と思われます。
そこで、原油相場を取り巻く需給環境を整理してみます。国際エネルギー機関(IEA)は4月14日発表の月報で、世界の原油需要について、2021年は日量9,670万バレルと、2020年から日量570万バレル増加するとの見通しを明らかにしました。原油需給は足元で持ち直しつつありますが(図表1)、世界的にワクチン接種が加速し、経済活動の正常化が順調に進めば、一段の需給改善も期待されます。
ただ、IEAはスーパーサイクルには否定的で、原油価格は70ドルを超えても上昇ペースは緩やかか
一方、原油の供給面について、石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」は4月1日、協調減産を5月以降、段階的に縮小していくことで合意し、また、サウジアラビアも独自の追加減産を縮小すると表明しました(図表2)。この結果、5月以降、日量200万バレル程度の供給増が見込まれますが、全体で供給超過となるほどではないと思われます。
なお、IEAは先月、原油の供給余力は十分あるとし、原油相場が長期にわたり上昇する「スーパーサイクル」に入ったとの一部観測については、否定的な見解を示しました。また、世界的な「脱炭素」の潮流も、先行きの原油需給に強く影響すると考えられます。以上を踏まえると、WTI原油先物価格はこの先、70ドルを超える展開も想定されますが、上昇ペースは、かなり緩やかなものになる可能性が高いとみています。
(2021年4月15日)
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