日経平均株価のEPSとPER~年初からの動きを検証する
日経平均株価のEPSとPER~年初からの動きを検証する
- EPSが主導する株高は、好業績を反映した株高、PERが主導する株高は、期待を反映した株高。
- 日経平均が2月に29,000円や30,000円を突破したのは好業績を反映したEPS主導によるもの。
- ただ新年度入り後、日経平均が30,000円を超えて上昇を続けるには業績の一段の回復が必須。
EPSが主導する株高は、好業績を反映した株高、PERが主導する株高は、期待を反映した株高
「EPS(Earnings Per Share)」とは「1株あたり利益」のことで、一般に純利益を発行済株式数で割ったものです。「PER(Price Earnings Ratio)」とは「株価収益率」のことで、株価を1株あたり利益で割ったものです。PERは、株価が1株あたり利益の何倍まで買われているかを示すため、利益水準に対する株価の割高、割安を判断する尺度として利用されます。
EPSとPERを掛け合わせると、現状の株価水準が得られます。そのため、例えば、好決算などで今期の1株あたり予想利益が増加すると、株価はEPSに主導される形で上昇します。また、投資家の間に株価の先高観が広がると、株価はPERに主導される形で上昇します。つまり、EPS主導の株高は「好業績」を反映した株高、PER主導の株高は「期待」を反映した株高といえます。
日経平均が2月に29,000円や30,000円を突破したのは好業績を反映したEPS主導によるもの
そこで、年初からの日経平均株価の上昇は、EPSとPER、どちらの主導によるものかを検証してみます。2020年12月30日から2021年2月24日までのEPSとPERの推移は図表1の通りです。先般の3月期決算企業による4-12月期の決算発表では、今期の業績予想を上方修正する動きが目立ちました。その結果、足元のEPSは大きく水準を切り上げています。
一方、PERは、前述の通り株価をEPSで割ったものですので、EPSの大幅上昇を受け、このところ低下傾向にあります。なお、EPSとPERの変動が、日経平均株価にどの程度影響を与えたのかを、具体的な数字でみると、やはりEPSの押し上げ寄与が顕著です(図表2)。日経平均株価は2月に入り、29,000円や30,000円という重要な節目を抜けて、上昇が加速しましたが、これは明らかにEPS主導の株高といえます。
ただ新年度入り後、日経平均が30,000円を超えて上昇を続けるには業績の一段の回復が必須
4月からの新年度入り後のEPSについて、市場は現在、東証株価指数(TOPIX)で約41.6%の伸びを見込んでいます。日経平均株価も、新年度のEPSについて、同程度の伸びを仮定すると、株価が30,000円の場合で、PERは約15.8倍に低下します。ただ、過去5年(コロナ・ショック前の2019年12月30日からさかのぼって5年)平均のPERは約14.2倍でしたので、これと比べると、まだ若干割高となります。
したがって、新年度入り後、日経平均株価が30,000円を大きく超えて上昇を続けた場合、EPSの増益の織り込みが4割強のままなら、割高の度合いが徐々に大きくなるということになります。なお、これらの数字は、あくまで計算上のものですが、少なくとも日経平均株価が過熱感を抑えつつ30,000円から更に上昇していくためには、企業業績の一段の回復が必須であることが分かります。
(2021年2月25日)
市川レポート バックナンバーはこちら
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。
三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会