新型コロナウイルスのワクチン開発動向

2020/07/22

新型コロナウイルスのワクチン開発動向

  • 世界各国でワクチンの開発が急ピッチで進行中、すでに第3相試験まで進んだ研究グループもある。
  • 英オックスフォード大学と英アストラゼネカ社による研究が早く進み、ワクチンは9月に供給開始予定。
  • ワクチン開発の予測は困難だが、臨床試験が段階的に進む限り、株価の下支え要因になるとみる。

世界各国でワクチンの開発が急ピッチで進行中、すでに第3相試験まで進んだ研究グループもある

足元の金融市場では、新型コロナウイルスのワクチン開発を巡る報道に、敏感な反応がみられるようになりました。そこで今回のレポートでは、国内外のワクチン開発動向をまとめます。なお、ワクチンの開発について、深く理解するには専門的な知識が必要となるため、ここでは厚生労働省や世界保健機関(WHO)などが公表するデータに基づき、株式相場を見通す上での材料を整理するにとどめます。

ワクチン開発の主なプロセスをまとめたものが図表1で、基礎研究、非臨床試験、臨床試験を経て、承認審査、販売・流通という流れになります。臨床試験には、第1相試験、第2相試験、第3相試験の3段階があり、段階が進むにつれ、試験の規模は大きくなります。現在、世界各国で新型コロナウイルスのワクチン開発が急ピッチで進められており、すでに第3相試験まで進んだ研究グループもあります。

英オックスフォード大学と英アストラゼネカ社による研究が早く進み、ワクチンは9月に供給開始予定

WHOの参考資料によれば、7月20日時点で臨床試験入りしている主な新型コロナウイルスのワクチンは、図表2の通りです。これによると、英オックスフォード大学と英アストラゼネカ社のワクチン、中国シノバック社のワクチンが、第3相試験入りしており、また、米モデルナ社と米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)のワクチンも、7月27日に第3相試験に入る予定となっています。

なお、英アストラゼネカ社は7月20日、初期の臨床試験(第1/2相試験)で強い免疫反応を確認したと発表しました。臨床試験は現在、英国やブラジルなどで行われていますが、日本でも8月の臨床試験実施に向けて調整が進んでいます。報道によれば、ワクチンは9月にも供給が始まる予定で、主要研究グループのなかでは、最も早く開発プロセスを進めています。

ワクチン開発の予測は困難だが、臨床試験が段階的に進む限り、株価の下支え要因になるとみる

一方、日本では、日本医療研究開発機構(AMED)が国内のワクチン開発を支援しています。具対的には、①組み換えタンパクワクチン(国立感染症研究所/UMNファーマ/塩野義製薬)、②mRNAワクチン(東京大学医科学研究所/第一三共)、③DNAワクチン(大阪大学/アンジェス/タカラバイオ)、④不活化ワクチン(KMバイオロジクス/東京大学医科学研究所/国立感染症研究所/医薬基盤研究所)などです。

新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に、収束の兆しがみられないなか、足元の株式市場が比較的底堅く推移しているのは、各国の経済対策や金融緩和に加え、ワクチン開発への期待も、一定程度影響していると考えています。一般に、ワクチンなど医薬品の開発は、予測が難しいとされますが、主要研究グループによる臨床試験が段階的に進む限りは、株価の下支え要因になると思われます。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。


(2020年7月22日)

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
市川レポート 経済・相場のここに注目   三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会

このページのトップへ