20年6月FOMCレビュー~ゼロ金利政策の長期化を示唆

20年6月FOMCレビュー~ゼロ金利政策の長期化を示唆

  • ゼロ金利政策の維持は予想通りの結果、FOMC声明では、米国債などの月間購入ペースを明示。
  • ドットチャートでは17人中15人が2022年末までゼロ金利維持を予想しマイナス金利予想はゼロ。
  • イールドカーブ・コントロールは議論継続へ、総じてハト派的なFOMCは、金融市場の安定要素に。

ゼロ金利政策の維持は予想通りの結果、FOMC声明では、米国債などの月間購入ペースを明示

米連邦準備制度理事会(FRB)は、6月9日、10日に米連邦公開市場委員会(FOMC)を開催し、大方の予想通り、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を年0.00%~0.25%で据え置き、ゼロ金利政策の維持を決定しました。市場では、今後の金融政策について、FRBがどのような方向性を示すかに注目が集まっていましたので、その点を中心に、以下、主なポイントを確認していきます。

まず、FOMC声明では、米国債などの購入ペースが明示されました。これまでは「必要な額だけ購入を続ける」としていましたが、「今後数カ月にわたり、少なくとも現行ペースで保有を増やす」という表現に変更されました。具体的な購入額は、ニューヨーク地区連銀が公表しており、それによると、米国債が毎月約800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)は毎月約400億ドルが目安となります。

ドットチャートでは17人中15人が2022年末までゼロ金利維持を予想しマイナス金利予想はゼロ

FOMCメンバーによる経済見通しは、新型コロナウイルスの影響を強く受けた内容となりました。実質GDP成長率の長期均衡水準は1.9%から1.8%へ下方修正された一方、失業率と物価上昇率の長期均衡水準は、それぞれ4.1%、2.0%で据え置きとなりました。ただし、失業率と物価上昇率は、2022年に至っても、長期均衡水準を回復できないとの見方が示されています。

そして、今回のFOMCで、特に注目されたのが、FOMCメンバーが適切と考える政策金利水準の分布図(ドットチャート)でした。ドットチャートでは、17人のメンバーのうち15人が、少なくとも2022年末までゼロ金利政策の継続が適切と考えており、マイナス金利を見込むメンバーはゼロであることが明らかになりました(図表1)。これにより、FOMCの政策運営は、ゼロ金利政策の長期継続が、当面の基本スタンスになると思われます。

イールドカーブ・コントロールは議論継続へ、総じてハト派的なFOMCは、金融市場の安定要素に

記者会見におけるパウエル議長の発言で、特に注目されたのは、イールドカーブ・コントロールに関するコメントでした。パウエル義長は、イールドカーブ・コントロールについて、政策手段に合うかどうかはまだ議論の余地があり、今後の会合で議論を続けると述べました。そのため、FRBの次なる一手として、イールドカーブ・コントロールが導入されることは、十分想定できると考えます。

なお、パウエル議長の記者会見後、米10年国債利回りは低下し、ドル円はドル安・円高で反応しました(図表2)。米国株式市場では、金融株などの下げが目立ちましたが、ナスダック総合指数は終値で大台の10,000ポイントをつけ、最高値を更新しました。今回のFOMCは、ゼロ金利政策の維持が示唆されるなど、総じてハト派的な内容となったため、長い目でみれば、金融市場の安定につながるものと思われます。

(2020年6月11日)

市川レポート バックナンバーはこちら

http://www.smam-jp.com/market/ichikawa/index.html

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
主要国のマクロ経済や金融市場に関する注目度の高い材料をとりあげて、様々な観点から分析を試みます。
●当資料は、情報提供を目的として、三井住友DSアセットマネジメントが作成したものであり、投資勧誘を目的として作成されたもの又は金融商品取引法に基づく開示書類ではありません。
●当資料に基づいて取られた投資行動の結果については、当社は責任を負いません。
●当資料の内容は作成基準日現在のものであり、将来予告なく変更されることがあります。
●当資料は当社が信頼性が高いと判断した情報等に基づき作成しておりますが、その正確性・完全性を保証するものではありません。
●当資料に市場環境等についてのデータ・分析等が含まれる場合、それらは過去の実績及び将来の予想であり、今後の市場環境等を保証するものではありません。
●当資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
●当資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。本資料を投資の目的に使用したり、承認なく複製又は第三者への開示等を行うことを厳に禁じます。
●当資料の内容は、当社が行う投資信託および投資顧問契約における運用指図、投資判断とは異なることがありますので、ご了解下さい。

三井住友DSアセットマネジメント株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第399号
加入協会:一般社団法人投資信託協会、一般社団法人日本投資顧問業協会、一般社団法人第二種金融商品取引業協会