親子上場に関する考察

2020/01/23

市川レポート 親子上場に関する考察

  • 日本でよくみられる親子上場には、親会社と子会社少数株主との間の利益相反という問題がある。
  • 親子上場は企業統治上問題との指摘もあり企業側が解消に動くなか、数は着実に減少している。
  • 親子上場は減少継続へ、解消の際、子会社価格が市場を上回ることもあり多くの投資家が注目。

日本でよくみられる親子上場には、親会社と子会社少数株主との間の利益相反という問題がある

親子上場とは、親会社とその子会社が、ともに株式を上場していることをいいます。日本ではよくみられる形態ですが、海外では多くありません。実際、経済産業省の資料によれば、親子上場企業数(親会社が子会社の株式を50%以上保有)が市場に占める割合は、2018年12月時点で、日本が6.1%、フランスが2.2%、ドイツが2.1%、米国が0.5%、英国が0.0%となっています。

親子上場には、例えば、社内の新規事業を分離し、子会社として上場させ、成長を促すという利点もあります。ただその一方で、親会社と、子会社の少数株主との間には、利益相反の関係が発生します。親会社は、子会社の総株主議決権の過半数を有し、子会社の財務および事業の方針について、決定を支配しています。そのため、親会社の利益が優先され、その結果、子会社の少数株主の利益が損なわれる恐れがあります。

親子上場は企業統治上問題との指摘もあり企業側が解消に動くなか、数は着実に減少している

親子上場について、海外投資家からは、親会社が支配的な立場を利用することもあり、企業統治(コーポレート・ガバナンス)上、問題があるとの声も聞かれます。このような状況下、企業側にも、親子上場の解消によって、コーポレート・ガバナンスを強化し、経営効率を高めようとする動きが顕著にみられるようになり、近年、親子上場の数は着実に減ってきています。

親子上場の解消について、最近の動きをまとめたものが図表1です。ホンダは2019年10月、ケーヒンなど3社の完全子会社化を発表しました。その後は、日立の完全子会社である日立オートモティブシステムズが、この3社を吸収合併することになります。このような動きは、単なる親子上場の解消ではなく、自動運転や電動化など次世代の潮流を見据え、主力部品での国際競争力強化を目的とする、異業種間の連携といえます。

親子上場は減少継続へ、解消の際、子会社価格が市場を上回ることもあり多くの投資家が注目

なお、政府や証券取引所も、親子上場の見直しを促す動きを強めています。政府は2019年6月に閣議決定した「成長戦略実行計画」のなかで、親子上場の問題を取り上げ、上場子会社のガバナンスのあり方を示す指針などを公表しました。これを受けて、東京証券取引所は同年11月、上場子会社の親会社からの独立性を高めるため、上場制度に関する規則を改定すると発表しました。

現時点で親子上場となっている主な企業は図表2の通りです。大きな流れとして、今後も親子上場の解消が続く可能性は高いと思われます。なお、親子上場の解消方法としては、株式公開買い付け(TOB)などを通じた完全子会社化による上場廃止や、他社への売却があります。いずれの場合でも、子会社の価格が市場価格を上回ることがあるため、多くの投資家が親子上場解消の動きに注目しています。

※個別銘柄に言及していますが、当該銘柄を推奨するものではありません。

(2020年1月23日)

 

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