パウエル発言を受けたドル円相場の行方
市川レポート パウエル発言を受けたドル円相場の行方
- 景気拡大維持のため適切に行動するとのパウエル議長発言に、市場は株高などリスクオンで反応。
- パウエル議長と同様、FOMCで投票権を持つクラリダ副議長やブラード総裁からもハト派的な発言。
- ドル円はFOMCと大阪G20サミットの結果次第で、105円~110円程度の振れ幅を伴う展開か。
景気拡大維持のため適切に行動するとのパウエル議長発言に、市場は株高などリスクオンで反応
米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は6月4日、シカゴ地区連銀で開催された金融政策に関する討論会で講演を行いました。パウエル議長は講演で、中国などとの貿易問題がいつどのように解決するのか分からないと述べ、そうした状況が米国経済の先行きに与える影響を注視し、景気拡大を維持するため、「適切に行動するだろう」と発言しました。
パウエル議長は直接利下げに言及していませんが、市場では利下げの可能性を排除していないとの見方が優勢となり、米利下げ→景気浮揚→株価上昇→長期金利上昇、という思惑が広がりました。実際、同日の米国市場では、株価の上昇、国債価格の下落(利回り上昇)、為替は対主要通貨で日本円や米ドルが売られるなど、総じてリスクオン(選好)の動きが鮮明となりました(図表1)。
パウエル議長と同様、FOMCで投票権を持つクラリダ副議長やブラード総裁からもハト派的な発言
パウエル議長のほかにも、ここ最近、米連邦公開市場委員会(FOMC)メンバーから、ハト派的なコメントが増えつつあります。具体的には、クラリダ副議長は5月30日、ニューヨークでの講演で、米国経済は堅調とした上で、物価の伸び悩みが想定以上に長期化し、また、海外景気や金融市場の下振れリスクが顕在化すれば、適切な金融政策スタンスを考えるとの見解を明らかにしました。
また、セントルイス地区連銀のブラード総裁は6月3日、予想よりも急激な景気減速に備え、政策金利の下方向の調整を加えることは、近く正当化されるだろうとの考え方を示しました。なお、2019年のFOMCで、政策決定の投票権を持つメンバーは図表2の通りです。パウエル議長とクラリダ副議長は常任メンバーとして投票権を持ち、ブラード総裁も2019年に投票権を持ちます。
ドル円はFOMCと大阪G20サミットの結果次第で、105円~110円程度の振れ幅を伴う展開か
ドル円については、2月以降、1ドル=110円を中心に上下1~2円程度のレンジ推移を見込んできました。その後、5月に入ると米中貿易摩擦問題が再燃し、足元では米利下げ観測が高まったことから、ドル円は今週、107円台をつけています。これらの状況を勘案すると、ドル円のレンジについては、ドルの下限を1ドル=105円程度までみておく必要があると思われます。
目先の重要イベントは、6月18日、19日に開催されるFOMC、6月28日、29日に大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議です。FOMCがハト派的な内容となり、また、G20で米中首脳会談が開催され、協議が進展すれば、110円方向への戻りも想定されます。一方、いずれのイベントも失望を誘う結果となれば、105円水準が意識される展開も考えられるため、ドル円はこの先、相応の振れ幅が予想されます。
(2019年6月5日)
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