米中貿易協議の行方~今後の焦点を整理する

 

市川レポート 米中貿易協議の行方~今後の焦点を整理する

  • トランプ米大統領は、2,000億ドル分の中国製品の制裁関税を、5月10日に引き上げると表明。
  • 主要市場はリスクオフで反応、ただ閣僚級の米中協議は5月9日と10日に開催され協議は継続。
  • 協議の進展次第で関税引き上げ回避も、しかし方向性が明確になるまで市場に警戒感は残ろう。

トランプ米大統領は、2,000億ドル分の中国製品の制裁関税を、5月10日に引き上げると表明

トランプ米大統領は5月5日、2,000億ドル分の中国製品に対する制裁関税の税率について、5月10日に現在の10%から25%へ引き上げることを表明しました。もともと、この税率引き上げは、2019年1月1日の予定でしたが、2018年12月の米中首脳会談や、2019年2月の米中閣僚級貿易協議を経て、足元まで期限の明示がないまま、引き上げが延期されていました。

今回の措置は、ツイッターで言及されたものですが、トランプ氏は同じくツイッターで、現時点で制裁関税がかけられていない中国製品についても、「速やかに25%の税率になる」と述べ、制裁関税第4弾の発動を示唆しました(図表1)。また、トランプ氏は、中国との貿易協議は続いているが、遅すぎるとも主張していることから、一連のコメントは、中国に最終合意を促すための「脅し」の意味合いが強いと思われます。

主要市場はリスクオフで反応、ただ閣僚級の米中協議は5月9日と10日に開催され協議は継続

トランプ米大統領のツイッターへの投稿を受け、5月6日の主要市場では、株価の下落、国債価格の上昇(利回りは低下)、円高の進行など、総じてリスクオフ(回避)の動きが目立ちました。なお、米国株式市場は同日、大幅安で取引が始まりましたが、中国側が協議を継続する姿勢を示したことなどから、主要株価指数は引けにかけて下げ幅を縮小する展開となりました。

その後、日本時間の5月7日早朝、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は、トランプ米大統領が表明した通り、2,000億ドル分の中国製品に対する制裁関税を5月10日に引き上げると述べました。また、5月8日からワシントンで開催が予定されていた閣僚級の米中貿易協議は5月9日、10日に開催されることになり、中国の劉鶴副首相も同席することも明らかになりました。

協議の進展次第で関税引き上げ回避も、しかし方向性が明確になるまで市場に警戒感は残ろう

仮に、米中の関税引き上げ合戦が再開された場合、主要国経済への影響は図表2の通り、中国のダメージが最も大きくなるとみられます。ただし、この推計は関税引き上げによる貿易数量の変化だけを考慮したものであるため、家計の消費手控えや企業の投資抑制などの要素まで勘案すると、実際の成長押し下げ効果は、推計値よりも大きくなる恐れがあります。

目先は、5月9日からワシントンで開催される閣僚級の米中貿易協議が焦点です。主な注目ポイントは、①産業補助金の撤廃に関する中国側の姿勢、②中国が合意に違反した場合の罰則条項の扱い、③制裁関税に関する今後の方針、であり、進展次第では5月10日の制裁関税引き上げ回避も考えられます。ただ、その方向性が明確になるまでは、金融市場に一定の警戒感が残ると思われます。

(2019年05月07日)

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