現代貨幣理論(MMT)について

2019/04/19

 

市川レポート 現代貨幣理論(MMT)について

  • MMTは自国通貨建て政府債務はデフォルトしないため、政府債務の増加は問題ないと説く理論。
  • 提唱者のケルトン教授は日銀のMMT実証に言及、ただ国債買い入れで新規通貨は創出されず。
  • 財政ファイナンスなどにより新規通貨の創出は可能だが日本では禁止、MMTは実現困難な理論。

MMTは自国通貨建て政府債務はデフォルトしないため、政府債務の増加は問題ないと説く理論

現代貨幣理論(Modern Monetary Theory, MMT)とは、通貨発行権を持つ国では、自国通貨が自由に創出されるため、自国通貨建て政府債務の不履行(デフォルト)は生じないと説く理論です。したがって、この理論に基づけば、巨額の財政赤字を抱えている国でも、景気安定に必要ならば自国通貨建ての債務を更に増やし、インフラ投資などを行うべきということになります。

米国では、2018年11月に女性として史上最年少の米下院議員となったアレクサンドリア・オカシオコルテス氏がMMTを支持したことで、一気にMMTへの関心が高まりました。また、MMTの提唱者の1人であるステファニー・ケルトン教授(米ニューヨーク州立大学)は、2016年の米大統領選挙でバーニー・サンダース米上院議員の顧問を務めており、サンダース氏が2020年の米大統領選挙に出馬表明していることも注目理由の1つです。

提唱者のケルトン教授は日銀のMMT実証に言及、ただ国債買い入れで新規通貨は創出されず

しかしながら、MMTについて、主流派経済学者や金融当局からは、「インフレリスクを軽視している」、「財政規律を緩める恐れがある」など、批判的な声が上がっています。なお、日本経済新聞社は4月13日、ケルトン教授との一問一答を電子版に掲載しました。そのなかで、ケルトン教授は「日本政府と日銀はMMTを実証してきた」と発言していますが、これは日銀の国債買い入れを示唆していると考えられます。

ただ、日銀の国債買い入れ自体に、新たに通貨を創出する機能はありません。国債買い入れの仕組みは図表1の通りです。民間銀行が財務省発行の国債を購入する場合、購入原資は主に家計の預金です。その後、日銀が民間銀行から国債を買い入れれば、国債の保有は民間銀行から日銀に移るものの、財務省が国債発行で調達した資金が家計の預金で賄われていることに変わりはなく、新たなおカネが生み出される訳ではありません。

財政ファイナンスなどにより新規通貨の創出は可能だが日本では禁止、MMTは実現困難な理論

また、ケルトン教授は、①財政政策で連邦政府が雇用を保障し、完全雇用を目指す、②財政法案にインフレ時の歳出抑制策を盛り込み、インフレを防ぐ、③米生産能力の最大化のために投資を受け入れるので、ドルは急落しない、との考えを示しました。ただ、現実の開放経済では、いったん財政規律や中央銀行への信認が失われてしまうと、通貨の下落や輸入物価の上昇を通じ、深刻なインフレと経済の大混乱が発生する恐れがあります。

なお、政府と中央銀行が新たに通貨を創出する方法は2つあります。1つは、政府発行の国債を中央銀行が直接引き受ける財政ファイナンスで、もう1つは政府の中央銀行からの借り入れです(図表2)。これらは民間銀行を介在しないため、新たに通貨が創出されますが、日本ではいずれも財政法第5条で原則禁止されています。拡張的な財政政策は2020年の米大統領選挙でも争点になる可能性がありますが、MMTは実現困難な理論と思われます。

(2019年04月19日)

 

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