日本株が織り込む米中貿易協議の進捗と今後の展望

2019/02/18

 

市川レポート(No.638)日本株が織り込む米中貿易協議の進捗と今後の展望

  • 米中ともに確約内容の覚書記載で合意、トランプ米大統領は改めて期限延長の可能性を示唆。
  • 米紙WSJは覚書に関する内容を2月15日に報道、今週詰めの協議が行われることも想定される。
  • 構造問題でどのような方向性が示されるかの織り込みは不十分なためボラティリティ上昇に要警戒。

米中ともに確約内容の覚書記載で合意、トランプ米大統領は改めて期限延長の可能性を示唆

2月14日、15日に北京で開催された閣僚級の米中貿易協議が終了しました。米ホワイトハウスは2月15日の声明で、「協議は詳細にわたって集中的に行われ進展がみられた」とした一方、「取り組むべきことが多く残っている」と述べ、3月1日の期限まで協議を継続する方針を示しました(図表1)。また声明では、米中両国が確約内容を覚書に記載することで合意したことを明らかにしました。

トランプ米大統領は2月15日の記者会見で、協議は非常に順調に進んでおり、合意に達すれば関税を撤廃すると発言しました。なお、米国は3月1日までに協議が合意に達しなければ、2,000億ドル分の中国製品に対する制裁関税の税率を10%から25%に引き上げることを表明済みですが、トランプ米大統領は同日、3月1日の期限を延長する可能性を改めて示唆しました。

米紙WSJは覚書に関する内容を2月15日に報道、今週詰めの協議が行われることも想定される

なお、前述の覚書について、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は2月15日、関係者の話として、覚書には中国による米国産品の輸入拡大、金融や製造業分野での市場開放の加速、米国企業の知的財産権保護の強化、といった内容が含まれる可能性があると報じました。また、合意事項の履行をどのように確認するかという問題についても、覚書に記載される見通しとのことです。

米中貿易協議は今週、ワシントンで再び開催されます。WSJの記事を踏まえると、覚書の内容について詰めの協議が行われることも推測されます。トランプ米大統領は2月15日、習近平(シー・ジンピン)中国国家主席との首脳会談に意欲を示しましたが、覚書の形が整えば、米中首脳会談が開催され、そこで最終合意、覚書の公表という流れになる可能性が高いと考えられます。

構造問題でどのような方向性が示されるかの織り込みは不十分なためボラティリティ上昇に要警戒

弊社では、米中貿易協議の展望について、貿易不均衡問題は、中国による米国産品の購入拡大で一定の成果が見込まれ、米国側もこれを評価すると考えています。しかしながら、知的財産権の保護など構造問題の解決にはかなりの時間を要するため、米国は3月1日の期限をいったん延長して協議を継続し、その間は制裁関税の税率引き上げを見送ると予想しています。

株式市場は3月1日の期限延長などを織り込みつつあるように見受けられますが(図表2)、構造問題について、先行きどのような方向性が示されるかまでは十分に織り込めていないと思われます。日経平均株価は2月18日の寄り付きで、再び21,000円台を回復しましたが、期待先行、先物主導によるところが大きいとみられます。構造問題の方向性次第では、日経平均株価の変動性(ボラティリティ)が急上昇する恐れもあり、引き続き警戒が必要と考えます。

(2019年2月18日)

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