生保の2023年度下期の運用計画
国内の大手生命保険会社の2023年度下期の運用計画が出そろいました(図表1)。以下、日経QUICK、ロイター、Bloombergなどの報道を基に、運用計画をまとめています。
日銀を除く主要国の中央銀行が政策金利を大きく引き上げ、高止まりさせる中、為替の変動リスクをヘッジ(回避)するコスト(主に為替ヘッジを行う通貨の金利と日本円の金利との差)が上昇しているため、上期にヘッジ付き外債(ヘッジ外債)の残高をゼロにした生保も散見されます。
下期についてもヘッジ外債を減らす一方、国内債、特に利回りが上昇してきている超長期債に資金を振り向ける運用が主流となっているようです。ただ、日銀が早晩、金融政策の修正に動くとみており、買い急がない姿勢がみられます。
今年度下期の運用方針について抜粋した各社の主なコメントは以下のとおりです。
◆ 国内債券 ~ 超長期債を積み増しも買い急がない姿勢 ~
- ALM(資産・負債の総合管理)の観点から超長期債の積み増しを継続する。
- 日銀が長期金利の変動幅の上限を拡大した後、国債の利回り水準が上昇し、買いやすくなったため、20年物や30年物の超長期債を中心に買う。
- 10年以下の債券については、年限や発行体の信用力を表す格付けなどを考慮しながら上乗せ金利が見込める社債を中心に買っていく。
- 上期に残高を増やした国内債を下期も積み増すが、ペースは緩やかになる見込み。
- 30年物などの超長期の国債を中心に残高を増やすが、円金利は大きくは下がらないとみており、買い急がない。
- 20年債利回りが8%まで上昇すれば、買ってもいいかなという水準になる。
- 超長期債の積み増しを継続する。30年債の利回りが2%を超えてくれば、買いのペースが加速する可能性がある。
- 日銀の政策修正や米金利がピークをつけるタイミングを見極めつつ、買いを徐々にスタートする。
- 新発30年物国債の利回りは絶対水準として良い水準まで切り上がってきているが、前のめりで買ってはいない。
- 国内金利の先高観はより高まっているとの見方から、下期の国内債購入を見送り、2024年度に繰り越す計画も考えている。
- 金利水準次第で機動的に積み増す方針。
◆ ヘッジ外債 ~ 慎重姿勢継続 ~
- 為替ヘッジにかかる費用(ヘッジコスト)の高止まりを踏まえ、引き続き為替変動リスクを回避するヘッジ外債の残高を減らす方針。
- ヘッジコストが高止まり、あるいは低下が小幅にとどまるとみており、ヘッジ外債から、円金利資産へのシフトを継続する。
- ヘッジコスト考慮後利回りの低下を踏まえ全体として売り越しペース継続を想定するが、金利低下(価格上昇)の可能性も踏まえ機動的に対応する。
- ヘッジ外債は相対的に高い収益を確保できる外国社債に入れ替える。
- 事業債はヘッジコストを勘案しても利回りが確保できると見込まれることから、ヘッジ率を調整しながら積み増す方針。
◆ オープン外債 ~ 為替の見方が分かれる ~
- 米金利の低下で円高・ドル安が進むとみており、為替ヘッジを付けないオープン外債については慎重に投資する。
- やや円高を見ているため、残高を増やすことは現在考えていない。
- 米景気が好調であるため円高・ドル安が進む時期は想定よりも後ろにずれ込む可能性が高く、オープン外債でインカムゲイン(利息収入)を得る機会はある。
- 内外金利差は2024年度、2025年度も急激には縮小しないとみており、急速な円高リスクは想定しにくく、米ドル建ての債券の魅力度、特にオープン外債で保有する魅力度が上がった。
- ヘッジ外債からヘッジのないオープン外債への切り替えも検討。
◆ 内外の株式 ~ 押し目買い姿勢 ~
- 国内株式は、株価が下がったタイミングで投資を増やす予定。
- 内外の株式は調整局面があれば残高を増やす見通し。
- 慎重にリスクテイクを行う方針で機動的に残高を調整。
◆ その他、オルタナティブ等 ~ PE、不動産ファンド投資を継続 ~
- プライベートエクイティ(PE=未公開株)や国内不動産といったオルタナティブ(代替)資産への投資は継続。
◆ 日銀の金融政策への見方 ~ 来年には政策修正 ~
- 2023年度内に長期金利をゼロ%程度(事実上の許容上限1%)に誘導するYCCを撤廃し、2024年度にはマイナス金利政策を解除すると想定。
- YCCの撤廃やマイナス金利政策の解除は、早ければ2024年1-3月にあってもおかしくはない。
- 2024年4月にYCCの撤廃とマイナス金利政策の解除に動くと予想する。もっとも円安進行やインフレの高止まりで、年内のYCC撤廃や2024年1-3月期のマイナス金利解除をリスクシナリオとして置いている。
- 2024年4月前後にマイナス金利政策を解除すると想定。
- 2024年4月にマイナス金利を解除した後、6月にYCCの変動幅の上限を撤廃すると予想。
- 賃上げの状況などを確認したうえで、2024年4-6月期に正常化のプロセスへと向かう。
- マイナス金利政策の解除時期の予想を2024年4-9月と、2025年度になるとみていた従来予想を前倒しし、あわせてYCCも撤廃する。
- 2024年7-9月にYCCの撤廃とマイナス金利政策の解除を同時に実施する。
◆ 今年度の相場見通し(図表2)
- 長期金利(10年債利回り)については、1%を超える可能性はあるものの、おおむね1%以内で推移する見通し。
- 米長期金利は、5%を超える場面はあるものの、徐々に低下していく見通し。
- 日経平均株価は、過半数が3万円を挟んだ動きを想定。期末値については、3万円台前半の見通し。
- NYダウについては、おおむね3万ドル台での動きを想定。
- ドル円の見通しを大幅に上昇修正。年度末は140円~145円に低下するとの見通しが大半。
- ユーロ円も大幅に上方修正。年度末は150円~155円に低下するとの見通しが大半。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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