利上げ停止後の、米株、米長期金利

2023/05/25

米連邦準備理事会(FRB)は、5月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを打ち止めし、6月の会合では利上げを見送るとの見方が足元ではまだ優勢です。

過去の利上げ停止後の米株については、ITバブル崩壊時を除き、おおむね堅調な動きが継続しました。ただ、その後の利下げ局面では、景気後退(リセッション)を免れ、ソフトランディング(経済の軟着陸)に成功した局面(1995年に利上げを停止)では、米株は堅調な動きが続いたものの、他の局面についてはリセッションを伴ったことから、さえない動きになりました。

今後についても、FRBがソフトランディングに成功するかが重要になりそうです。

他方、利上げ停止後の米長期金利については、総じて低下する動きになりました。ただ、今回は政策金利の水準を長期金利が大きく下回っており、過去の局面ほど低下圧力は強くならない可能性があります。

1995年2月で一旦利上げ停止

FRBは、1993年後半からの景気拡大の本格化に伴うインフレ圧力の高まりを未然に防ぐため、1994年2月に金融引締めへと転じ、1995年2月までに政策金利を3.0%から6.0%に引き上げました。その後、インフレ圧力が後退したことを受けて1995年7月に利下げを実施しました。景気拡大を受け、1回利上げし、以降は政策金利の水準を維持していましたが、アジア通貨・金融危機に端を発した国際金融市場の混乱等を受け、1998年9月に利下げに転じました。

この局面では、米経済はリセッションに陥らず、ソフトランディングに成功した形になりました。

米株は、利上げ局面ではさえない動きが続いていましたが、利上げ停止後は堅調な動きが継続しました(図表1)。

米長期金利は、利上げ停止後は低下傾向が続きました(図表2)。

▣ 2000年5月で利上げ停止

1998年8月のロシア金融危機以降、3回のFOMCで政策金利は0.25%ずつ引き下げられ、4.75%まで低下しました。しかし、海外経済の回復、金融市場の安定化、強い内需などを背景に、将来のインフレを未然に防止するため、FRBは1999年6月に利上げに転じました。2000年5月まで6回、政策金利を引き上げて6.5%となり、利上げを停止しました。

2000年後半以降、IT関連産業を中心に始まった景気の減速は、2001年前半までに広く経済全般に波及し、米景気は後退局面入りしました。

利上げ停止後の米株は、レンジでのもみ合いが続きました。利下げ開始後は不安定な動きになりました(図表3)。

米長期金利は、低下傾向が続きました(図表4)。

2006年6月で利上げ停止

FRBは、エネルギー価格が上昇する一方、コア・インフレ率(エネルギー・食料を除いた物価上昇率)も加速したことを受け、2004年6月に利上げに転じました。その後も、雇用が回復する中、雇用面でのコスト上昇圧力の高まりなどを背景に、利上げを継続しました。物価上昇圧力がいずれ抑制されるとの見方から、2006年6月で利上げが打ち止めになりました。

米国経済は緩やかな回復が続いていたものの、2007年夏場にサブプライム住宅ローン問題への懸念が強まったことを受け、金融市場の混乱の経済全般への悪影響を未然に防ぐため、政策金利の誘導目標水準を0.5%引き下げ、4.75%とすることを決定しました。その後、金融危機と実体経済の悪循環から米国経済は景気後退入りしました。

利上げ停止後の米株は、堅調な動きになりましたが、利下げ局面ではリーマンショックを受け、大きく値を崩す動きになりました(図表5)。

米長期金利は、おおむね利上げ停止前の水準を下回って推移しました(図表6)。

2018年12月で利上げ停止

米国経済が2009年6月を底に回復局面が続く中、FRBは政策金利を0~0.25%に抑えるとともに、国債等の購入による量的緩和政策で景気を下支えしました。景気や労働市場が着実に回復する中、インフレ加速や景気過熱を警戒して、2015年12月に利上げを決定しました。

2016年前半は、米国経済の回復が鈍化したものの、後半は持ち直しました。FRBは2016年12月に、1年ぶりに政策金利を引き上げ、2018年12月まで利上げを継続しました。

米中貿易摩擦への警戒に加え、世界経済の減速懸念が意識される中、2019年7月、10年7か月ぶりに利下げを実施するとともに、バランスシートの縮小(米国債などの保有資産の圧縮)の停止時期を当初予定していた9月末から2か月前倒ししました。

米国経済は2020年に入り、新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、短い期間ながら景気後退入りしました。

利上げ停止後の米株は、堅調な動きが続きました。利上げ開始後もしっかりの動きが続いていましたが、コロナ・ショックを受け、急落しました(図表7)。

米長期金利は、低下傾向が続きました(図表8)。

 

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「投資環境」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
内外の投資環境分析を基に、投資に資する情報、見通しなどを、タイムリーにお伝えします。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ