ECBも金融引締め、市場は景気減速を懸念

2022/06/13 <>

- 今回のECB理事会のポイント -

  • 資産購入プログラム(APP)は7月1日に終了
  • 7月の理事会で政策金利を0.25%引き上げる方針
  • 9月に再び政策金利を引き上げると予想
  • 中期的インフレ見通しが変わらないか悪化すれば、9月理事会でより大幅な引上げが適切
  • 域内の国債利回りの格差を抑制し、ユーロ圏国債市場の分断を防ぐ措置の詳細は発表せず

▣ インフレを警戒、7月から利上げを開始

欧州中央銀行(ECB)は6月9日に開いた理事会で、資産購入プログラム(APP)の終了を表明するとともに、7月から利上げを開始する方針を示しました。

理事会後のラガルド総裁の主な発言は以下のとおりです。

  • 高いインフレ率が我々の主要な課題。
  • インフレをめぐるリスクは主に上方向。
  • 供給網の目詰まりが再び生じたことに加え、経済再開に伴いサービス業を中心に内需が回復していることも、物価上昇に拍車をかけている。
  • 中期的に需要が弱まれば、物価上昇圧力は低下する。
  • 世界のエネルギー価格は当面高止まりするが、その後はある程度緩やかになる。
  • 7月の利上げでインフレに直ちに影響が及ぶとは予想していない。
  • 9月以降は、緩やかだが持続的な利上げが適切。
  • 必要となれば、既存の政策手段あるいは新たな措置を取る。

▣ インフレ見通しを大幅に上方修正

あわせて公表した最新の経済見通しでは、今年のインフレ率は6.8%とし、前回3月の5.1%から大幅に上方修正しました(図表1)。2023年は3.5%、2024年は2.1%としました。インフレは来年にはほぼ収まるとの前回の見方は、大きく修正された格好です。

また、主にウクライナ紛争の域内経済への影響に起因して、2022年、2023年の経済成長率を引き下げました。

▣ 市場は景気減速を警戒

9日の欧州金融市場では、ECBが金融引締めに前向きなタカ派的な姿勢を強めたことから、独長期金利は1.43%と0.08ポイント上昇しました(図表2)。欧州株は、インフレ加速や経済成長の減速懸念から下落、ユーロは一旦上昇したものの、金融政策の正常化がユーロ圏の景気減速を招くとの警戒感から、下落に転じました(図表3)。

10日には米長期金利が大きく上昇したことも手伝い、独長期金利は1.51%台まで上昇しました。ユーロは、米長期金利の上昇を受けて対ドルでは下落、また対円でもユーロ圏の景気減速懸念などから下落しました。欧州株も景気減速懸念が重しになりました。

今後は、利上げの影響に加え、9月の利上げ幅や、保有資産を圧縮する量的引締めの開始時期などが焦点になります。また、ECBが域内の国債利回りの格差抑制に動くかも注目されます(図表4、5)。

ラガルド総裁は米連邦準備理事会(FRB)に追随したわけではないとしていますが、米国だけでなく欧州も金融引締めに転じ、欧米の景気減速への警戒が強まっています。中国の経済再開への期待などは内外経済の支えになるとみられますが、5月の米消費者物価指数が予想を上回るとともに、前月から伸びが加速し、米国のインフレがピークアウトしたとの楽観的な見方が後退したことは投資家心理を悪化させそうです。欧米のインフレが落ち着くまでは不安定な相場が続く可能性があり注意が必要です。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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