米利上げの長期化観測がやや後退
▣ 今年の米利上げの織り込みは
米金融市場では、米連邦準備制度理事会(FRB)による利上げが長期化するとの観測がやや後退しています。
FRBのパウエル議長らは、5月に続き6月、7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも0.5%ずつの利上げが適切と繰り返し述べています。米短期金融市場でも、6月が0.5%、7月も0.5%の利上げの織り込みになっています(図表1)。
それ以降について市場は、9月は0.25%もしくは0.5%、11月は0.25%、12月も0.25%利上げの織り込みです。
▣ 米利上げは来年後半には休止も
また、市場が織り込む今年12月の政策金利水準は、2%台後半と年内に中立金利(景気を冷やしも熱しもしない金利水準、2.4%程度)を上回ります。ただ、この水準は4月下旬から大きく変わっていません(図表2)。一方、2023年の水準が切り下がってきています。
2023年は前半に1~2回の利上げを実施し、その後は利上げ休止でそれまでの金融引締めの影響を見極めるとの織り込みです(図表3)。
この利上げの織り込みは、
- 2023年前半までの利上げで、インフレ鎮静化が見通せるようになる
- 2023年前半までの急速な利上げを受けて米経済が悪化し、利上げ休止を余儀なくされる
と、良い利上げシナリオ、悪い利上げシナリオのどちらの見方もできそうです。
▣ 期待インフレ率の織り込みは、良い利上げシナリオか
他方、米金融市場の期待インフレ率も落ち着いてきています。期間別の期待インフレ率は、期間が長いほど低下しており、徐々にインフレが落ち着いていく織り込みです(図表4)。ちなみに2年後の1年間の期待インフレ率は2%台半ばで、2年を待たずに3%を下回ると市場は見ていることになります。
米シカゴ連銀のエバンス総裁が17日に、2023年にはインフレ率が3%を下回ると楽観していると語ったと報じられましたが、この発言にやや近い市場の織り込みと言えそうです。
利上げの道筋については、FRBと市場との乖離が小さくなってきているとみられ、この道筋に近い軌道で利上げが行われるとの観測が広がると、金融政策をめぐる不透明感で市場が不安定になる場面は少なくなりそうです。
米債券市場では、6月から開始される米国債などの保有資産を圧縮する量的引締め(QT)による需給悪化には注意が必要ですが、利上げ加速を警戒した米長期金利の一段の上昇は限定的になる可能性があります。
今後は、米経済が堅調さを維持する一方、インフレがピークアウトしたことが明確になると、米株式市場にも安心感が広がることも想定されます。
米経済指標やFRB高官の発言に加え、6月のFOMC(14,15日)で公表される政策金利見通しや物価見通しなども確認したいところです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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