生保の 2022 年度の運用計画
国内の大手生命保険会社の2022年度の運用計画が出そろいました(図表1)。以下、日経QUICK、ロイター、Bloombergなどの報道を基に、運用計画をまとめています。
引き続き、国内の超長期債については積み増し傾向が強いことに加え、30年債や40年債の利回り上昇を受け、投資妙味が出てきていることから、生保各社の超長期債への投資が国内債券のイールドカーブ(利回り曲線)の一段のスティープ化(利回り上昇、急こう配化)を抑制しそうです。
他方、米連邦準備制度理事会(FRB)による金融引締めを受け、為替変動リスクをヘッジ(回避)するためにかかる費用(ヘッジコスト)が上昇しています。為替リスクをヘッジして外国債券に投資するヘッジ外債については、利回りが上乗せされる社債や、ヘッジコストが相対的に低い欧州債などが投資対象になりそうです。
また、リスク分散と収益強化のため、オルタナティブ(代替)資産への投資、ESG(環境・社会・企業統治)を考慮した投資を継続する姿勢が鮮明です。
今年度の運用方針について抜粋した各社の主なコメントは以下のとおりです。
◆ 国内債券 ~ 以前より投資しやすい金利水準に ~
- 米国債への投資は抑制し、国内の超長期債などにも資金を振り向ける。
- 国内債への投資残高は増やす計画で、事業債などクレジット資産の組み入れを進める。
- ALM(資産・負債の総合管理)の観点から超長期の国内債を積み増す方針。
- 為替変動の影響を受けない円金利は相対的に魅力がある。
- 国内の30年金利は1%付近にあり、過去2、3年と比べると非常に投資しやすい環境にはなっている。
- 30年金利の水準が高くなってきており、米国のヘッジ外債と比べると相対的に魅力的。
- 超長期金利が1%程度では、全てを円金利に振り向けるには水準が低い。
- 日銀の金融政策修正の思わくなどで、30年債や40年債の利回りが1%台半ばに上昇すれば投資妙味が増してくる。
- 年度後半にかけての金利上昇を見込み、下半期にやや比重を置いて資金を積み増す。
◆ 外国債券
- 金利上昇が一服して投資妙味が高まったと判断した場合には、積み増しを検討。
- 国債から社債などへの入れ替えを進めて利回り向上も目指す。
- 今後の金利や為替水準次第で残高を機動的に管理する。
〇 ヘッジ外債 ~ ヘッジコスト上昇を受け、社債やユーロ債への投資も ~
- FRBによる金融引締めを背景に、ヘッジコストが上昇しているため、米国債への投資を抑える方針。
- ヘッジコストの上昇を加味しても、海外の高い金利を取り入れる合理性も出てきた。
- ヘッジコストが米ドルに比べて相対的に低位で推移すると見込まれるユーロでの投資も検討。
- 2022年度は、FRBがインフレ対応で政策金利を3%程度まで引き上げ、為替ヘッジのコストが上昇すると想定。
- 米国債など利回りが低い外国債券を売却し、ヘッジコストが上昇しても相対的に高めの利回りを確保できる外国社債などに入れ替える方針。
- 国内外の金利の方向感に変化があればヘッジ付き外債を中心に資産配分を見直す可能性がある。
〇 オープン外債 ~ 各社まちまち ~
- ヘッジコストが上昇するなか、為替リスクをヘッジしない外国債券(オープン外債)を積み増す。
- オープン外債については、スプレッド収益獲得のため海外社債を増やす。
- 金利上昇時の債券価格の下落を為替差益(ドル円の上昇等)でカバーできるオープン外債には妙味がある。
- オープン外債については、一段の円安余地が限られると予想し、横ばいから減少を見込む。
- オープン外債は為替の動向次第だが、米ドル以外にも投資する。
◆ 内外の株式 ~ やや慎重 ~
- 国内外の株式への投資は調整局面で押し目買いを狙う。
- 内外株式は積み増しを基本とするが、ウクライナ情勢の動向も見極めて慎重に対応する。
- 内外株式は、世界的なインフレ高進の動向や年後半の景気減速リスクを受けて調整局面があるとの前提のもと、慎重な投資方針を維持する。
- 内外株式は、コロナ禍からの経済正常化で企業業績は堅調である一方、金融引締めや資源価格の上昇が重しとなり、2023年3月末は横ばい圏で着地すると見込む。
- 外国株についてはリスク許容度や株価水準次第では積み増す可能性もある。
◆ その他、オルタナティブ等 ~ オルタナティブ投資を継続、不動産投資も ~
- オルタナティブ(代替)投資ではヘッジファンドのほか、プライベートエクイティ(PE=未公開株)、プライベートデット(未公開企業融資)への投資に力を入れる。
- 環境や社会、企業統治への投資先の取り組みを重視するESG投融資については、投融資実績をさらに積み上げていく。
- PEや不動産などオルタナティブ投資は引き続き拡大する方針。
- 株式などのリスク資産を減らすなか、オルタナティブ投資(ヘッジファンド、PE)で収益強化を図る。
- 不動産も用途分散や入れ替えで残高を積み増す方針。
- 2022年度はFRBがインフレ抑制を目的として、政策金利を一時的に中立金利である2.4%を超える水準まで利上げすることを想定している。
- 日米金融政策の違いや日本の貿易赤字拡大懸念で円安が進んでいる。為替見通しは円安方向に修正した。
- 米国のインフレは年後半には落ち着き、日銀の金融緩和政策は年内は継続と考えるが、政策変更への思惑が徐々に市場に出始め、円安はどこかで落ち着いてくると考えている。
- 内外株式は、各国の金融政策やウクライナ情勢をめぐる不透明感が後退するにつれて株価も緩やかに上昇すると想定している。
◆ 今年度の相場見通し(図表2)
- 長期金利については、0.20%中心。
- 米長期金利については、2%台後半に引き上げ。
- 国内株については一部を除き、ほぼ横ばいの見通し。
- NYダウについては、3万ドル半ばを想定。
- ドル円は大きく引き上げ、125円前後が大半。
- ユーロ円はやや強気の見通し。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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