FRB、積極的な金融引締め開始
- 今回のFOMCのポイント -
- 25%の利上げを決定
- 今後の会合でも利上げを続けるのが適切
- 政策金利見通し、インフレ見通しを大幅に引き上げ
- 2022年の7回の利上げ見通しは、市場の織り込みとほぼ一致
- 量的引締め(保有資産の縮小)については、早ければ5月の会合で開始決定も
- 米金融政策をめぐる不透明感は後退
▣ 予想通り利上げを開始
米連邦準備制度理事会(FRB)は3月15、16日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で、事前の予想通り政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を0.0~0.25%から0.25~0.5%に、0.25%引き上げました。2018年12月以来の利上げとなります。
今回のFOMCでは、利上げ見通しが大幅に引き上げられるなど金融引締めに積極的なタカ派的な姿勢が示されましたが、おおむね市場の予想の範囲内だったことに加え、米金融政策をめぐる不透明感がやや後退したことや、パウエルFRB議長が景気後退への懸念を和らげたことから、投資家のリスク回避姿勢は強まりませんでした。
パウエルFRB議長の記者会見での主な発言は以下のとおりです。
- 金融政策の姿勢を適切に引き締めることで、労働市場が堅調なうちに物価上昇率が2%に戻ると予想。
- 参加者の物価上昇率予測は、22年が3%、23年が2.7%、24年が2.3%と低下していくが、12月時点の予測より高く、参加者は引き続き上方リスクを警戒。
- 政策金利の継続的な引き上げが適切。
- 保有資産の縮小も、金融引締めの点で重要。早ければ次の5月の会合で、縮小開始に移れるところまできている。3週間後に公表する議事録で、より詳細な議論が明らかになる。
- 供給制約や、それがもたらすインフレがどうなるかわかっていれば、もっと早く動くことが適切だった。
- 今後1年以内に景気後退に陥る可能性は高くはないとみている。
▣ インフレ見通しを大幅に上方修正
FOMC参加者の経済見通しでは、2022年の実質国内総生産(GDP)予想の中央値は前年同期比2.8%増と、12月予想の4.0%増から下方修正しました(図表1)。利上げが成長率の下方修正に大きく影響したわけではなく、ウクライナ侵攻から波及する原油高、商品高が主な要因としています。2023年、2024年については前回と変わりませんでした。
また、FRBが物価の目安として注目する食品・エネルギーを除くコア個人消費支出価格指数(コアPCEデフレーター)は、2022年は4.1%上昇と、12月の予想(2.7%上昇)から大幅に引き上げられました。2023年、2024年も若干引き上げられ、2024年までは物価目標の2%を上回る状況が続く見通しです。
▣ 今年の政策金利見通しを大きく引き上げ、政策金利のピークは前倒し
2022年のFOMC参加者の政策金利の見通し(中央値)は1.875%と、12月の0.875%から大きく引き上げられました(図表2)。利上げ回数に直すと、前回は3回の見通しが、今回は7回と大幅に増えました。また、2023年に3回~4回利上げした後、利上げを終了し、2025年以降は利下げに転じる可能性が示唆されました。
▣ 市場の利上げの織り込みは
他方、米短期金融市場が織り込む利上げ回数は、2022年が7回程度、2023年は3回程度、2024年は0回の計10回程度と、FOMC参加者の見通しとほぼ同じ織り込みです(図表3)。
また、米短期金融市場では、5月もしくは6月の会合で、0.25%ではなく0.5%の利上げが実施される可能性も織り込んでいます(図表4)。
今回はウクライナ情勢の不透明感もあり、0.25%の利上げにとどまりましたが、インフレ高進が続く中、FRBが金融引締めを急ぐとの見方は根強いようです。
金融市場では、5月もしくは6月の会合で大幅な利上げがあり得ること、早ければ5月の会合で量的引締め(保有債券の償還金をそのまま再投資せず、減額していく)の開始が決定されること、その量的引締めは前回よりも早いペースとなることなどはほぼ織り込まれているとみられます。
米金融政策をめぐる不透明感が後退する中、3週間後に公表される今回のFOMCの議事要旨、米経済指標、ウクライナ情勢などを確認しながら、今後の金融政策運営を探ることになります。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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