日銀、インフレ見通しを上方修正、政策変更の議論はせず

2022/01/19

- 今回の金融政策決定会合のポイント -

  • 大規模な金融緩和を維持
  • インフレ見通しを上方修正
  • リスクバランスも「下振れリスクの方が大きい」から、「概ね上下にバランスしている」に
  • インフレは企業物価の上昇などから上振れも、資源高による上昇は一時的
  • 2%の物価安定目標の達成までは、現行の大規模緩和を維持する方針
  • 2%の物価目標達成前の利上げ開始を議論しているとの報道を黒田総裁は否定

▣ 大規模な金融緩和を継続

日銀は1月17、18日の金融政策決定会合で、短期金利をマイナス0.1%、長期金利の指標である10年物国債の利回りをゼロ%程度に誘導する長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)や上限を設けない長期国債の買入れなど、大規模な金融緩和の維持を決めました。

また、上場投資信託(ETF)や不動産投資信託(Jリート)について、それぞれ年間約12兆円、年間約1,800億円に相当する残高増加ペースを上限に、必要に応じて買入れを行う方針も維持しました。

▣ 2022、2023年度のインフレ見通しを上方修正

あわせて公表した「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」では、2021年度の実質国内総生産(GDP)成長率の見通しを前年度比2.8%と、昨年10月時点の3.4%から引き下げました(図表1)。一方、2022年度については、前回の2.9%から3.8%に引き上げました。

消費者物価(生鮮食品除く、コアCPI)上昇率の2021年度の見通しは0.0%と、基準改定(指数に採用する品目とそのウエイトなどを見直し)の影響などから引き下げた前回と変わりませんでした。2022年度は1.1%の上昇と前回の0.9%上昇から、2023年度は1.1%の上昇と前回の1.0%上昇から引き上げました。とはいえ、安定的な2%の物価目標の達成は見通せない状況が続いています。

▣ 展望レポートの公表文(基本的見解)の主なポイント

  • 日本経済の先行きについては、新型コロナウイルス感染症によるサービス消費への下押し圧力や供給制約の影響が和らぐもとで、外需の増加や緩和的な金融環境、政府の経済対策の効果にも支えられて、回復していく。
  • 先行きの物価については、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、当面、エネルギー価格が上昇し、原材料コスト上昇の価格転嫁も緩やかに進むもとで、携帯電話通信料下落の影響も剥落していくことから、振れを伴いつつも、プラス幅を拡大していくと予想。
  • その後は、エネルギー価格上昇による押し上げ寄与は減衰していくものの、マクロ的な需給ギャップの改善や中長期的な予想物価上昇率の高まりなどによる基調的な物価上昇圧力を背景に、見通し期間終盤にかけて1%程度の上昇率が続く。
  • 前回の見通しと比べると、成長率については、2021 年度は供給制約の影響から下振れる一方、2022 年度は政府の経済対策の効果や挽回生産などを背景に上振れ。物価については、資源価格の上昇やその価格転嫁などを反映して、2022 年度が幾分上振れ。
  • リスク要因としては、引き続き感染症の動向や、それが内外経済に与える影響に注意が必要。
  • また、供給制約の影響を受けるもとでの海外経済の動向に加え、資源価格の動きやその経済・物価への影響についても先行き不確実性は高い。
  • リスクバランスは、経済の見通しについては、感染症の影響を中心に、当面は下振れリスクの方が大きいが、その後は概ね上下にバランスしている。
  • 物価の見通しについては、概ね上下にバランスしている。

▣ 2%の物価目標を堅持

黒田日銀総裁は会合後の記者会見で、事前報道で注目された「物価目標達成前の利上げ開始」については、物価が着実に2%に向かっている状況ではない中、議論はしていないと、政策変更を否定しました。

また、総裁の任期(2023年4月まで)にあわせて金融正常化の議論をする状況にはなく、足元の円安についても悪い円安とは考えていないとしました。

足元の物価上昇については、供給制約や資源価格の上昇は一時的との見方を示すとともに、物価が2023年でも1%程度の上昇にとどまる見通しであることから、大規模な金融緩和を維持する姿勢を改めて示しました。

今後、物価が一時的に上振れした場合でも、政策変更はなく、日銀の異次元緩和は堅持されそうです。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/env/

 

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