FRB、テーパリングを加速、利上げ見通しも引き上げ
- 今回のFOMCのポイント -
- テーパリングを加速(資産買入れの縮小額を倍増)
- 来年3月にはテーパリング終了
- インフレは一時的との文言を削除
- インフレ見通しを引き上げ
- 来年は3回の利上げ見通し
- 今後は利上げ開始時期、利上げペースとFRBの保有資産の縮小が焦点に
▣ インフレ圧力の高まりを背景に、テーパリングを加速
米連邦準備制度理事会(FRB)は、12月14、15日に開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置く一方、米国債などを買い入れる量的緩和(QE)の縮小(テーパリング)ペースを来年1月から加速させることを決めました(図表1)。
FRBは新型コロナウイルスの危機対応として、毎月1,200億ドル(米国債800億ドル、住宅ローン担保証券(MBS)400億ドル)を買い入れる量的緩和政策を続けてきましたが、11月のFOMCで米国債100億ドル、MBS50億ドルの合計150億ドルを買入れ額から毎月減額することを決めました。今回のFOMCでは、来年1月中旬から毎月の資産購入ペースを、米国債200億ドル、MBS100億ドルの合計300億ドル減額と、減額幅を倍増させることを決めました。
FRBのパウエル議長は来年3月中旬までに資産買入れを終了するのが適切とした一方、資産買入れが続く間は利上げをしないとの考えを示しました。
また、声明文からは「インフレは一時的」との文言が削除され、力強い労働市場とインフレ圧力の高まりを受け、テーパリングの加速を決定したとしています。
▣ インフレ見通しを上方修正
FOMC参加者の経済見通しでは、2022年の実質国内総生産(GDP)予想の中央値は前年同期比4.0%増と、9月予想の3.8%増から上方修正しました(図表2)。一方、2023年は2.5%から2.2%に引き下げました(図表2)。
また、FRBが物価の目安として注目する食品・エネルギーを除くコア個人消費支出価格指数(コアPCEデフレーター)は、2022年は2.7%上昇と、9月の予想(2.3%上昇)から大幅に引き上げられました。2023年も若干引き上げられ、2024年までは物価目標の2%を上回る状況が続く見通しです。
▣ 政策金利見通しを引き上げ
2022年のFOMC参加者の政策金利の見通し(中央値)は0.875%と、9月の0.25%から大きく引き上げられました(図表3)。利上げ回数に直すと、前回は0.5回の見通しが、今回は3回に増えました。また、2023年は3回、2024年は2回と、3年間で8回の利上げが示唆されました。
▣ 市場の利上げの織り込みは
他方、米短期金融市場が織り込む利上げ回数は、2022年が2~3回(2.5回)、2023年も2~3回(2.5回)、2024年は1回の計6回の利上げとなっており、FOMC参加者の見通しと比べ、特に2023年以降が慎重な見方になっています(図表4、5)。
今後、2023年以降の市場の利上げの織り込みが、FOMC見通しにサヤ寄せしてくると、米長期金利などにも上昇圧力がかかってくる可能性がありそうです。
▣ 今後は量的引き締めに関心
15日の米金融市場は、FOMCがほぼ想定の範囲内の内容となったことで安心感が広がりました。米株は上昇、米長期金利は小幅な上昇にとどまりました。
来年の利上げについては6月、9月、12月がメインシナリオとなりそうですが、インフレへの対応が後手に回っているとの見方が強まると、前倒しの可能性もありそうです。
また、テーパリング終了後は、しばらくはFRBが保有する米国債などの資産残高(拡大したバランスシートの規模)は維持され、大量に供給した資金も市場に残ると見込まれます。このFRBの保有資産の縮小については、今回のFOMCで初めて議論し、今後も議論が続くとしています。
保有資産の縮小は、量的緩和とは逆に、量的引き締め(緩和マネーの縮小、QT)となることから、金融市場への影響も大きいとみられ、今後、利上げ見通しとともに注目されていくことになりそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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