米利上げと金融市場
9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、年内のテーパリング(米国債などを買い入れる量的緩和の縮小)開始に加え、政策金利見通しで2022年中の利上げの可能性が示唆されました。このFOMC以降、米長期金利が一時1.5%台後半まで上昇する動きとなり、米株市場がやや不安定になる場面も出てきています。
CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のFedWatchツールによると、来年中の利上げ確率は75%程度と、来年12月のFOMCでの利上げがほぼ織り込まれています。
前回のテーパリング時の内外の金融市場の動きについては以前も取り上げましたが(2021年6月4日の「投資環境」参照)、今回はテーパリング時(2014年1月~10月)に加え、米利上げ(2015年12月)開始前後の動きを振り返ります。
ただ、前回の米利上げ開始前の2015年の夏場にはチャイナ・ショックが起こり、12月の利上げ開始後には中国経済の先行き不安、原油価格の大幅下落、北朝鮮の核問題などのリスクオフ(回避)要因が重なりました。
前回の米利上げ前後の金融市場の動きを参考にする際には、これらの影響を差し引いて考える必要はありそうです。
▣ 前回のテーパリング時および利上げ前後の動き
- 米株、米長期金利の動きは -
- 米株については、テーパリング時は堅調な地合いが継続したものの、米利上げ開始前後はやや不安定な動きに(図表1)。その後はしっかり。
- 米長期金利は、テーパリング開始前に大きく上昇したこともあり、テーパリング開始後は低下基調が継続。テーパリング終了後も低下が続いたものの、利上げ開始に向かって上昇。ただ、利上げ開始後は、一旦低下する動きに(図表2)。
- 利上げ開始後については、中国経済の先行き不安、原油価格の大幅下落、北朝鮮の核問題などを背景に株安、債券高(価格上昇、利回り低下)が進行。また、利上げは緩やかなペースになるとの見方も、米長期金利の上昇を抑制。
- 日本株、長期金利の動きは -
- 日本株については、テーパリング開始時は一旦軟調な動きになったものの、持ち直して以降は、テーパリング終了後も堅調な動きが継続。ただ、米利上げ前はやや不安定な動きになり、利上げ開始後は中国不安も手伝い売りがやや優勢に(図表3)。
- 日本の長期金利は、テーパリング時は米長期金利とともに低下基調が継続。利上げ開始前、開始後も米長期金利とほぼ同じ動きとなってものの、大幅に下回る水準で推移(図表4)。日銀は2016年1月末にゼロ金利政策を導入。
- ドル指数、ドル円の動きは -
- ドル指数については、テーパリング開始前に上昇が一服し、開始後はしばらくもみ合いが続いたものの、終了に向けて大きく上昇する動きに。テーパリング終了後も上昇が継続。その後は一旦下落。米利上げ開始に向け得て上昇したものの、開始後は下落する動きに(図表5)。
- ドル円についても、テーパリング終了の手前から大きく上昇しており、テーパリングより利上げを意識した動き。利上げ開始後は、中国経済の先行き不安などから投資家のリスク回避が強まり、逃避通貨とされる円を買う動きが優勢に(図表6)。
- 日米のリートの動きは -
- 米リートについては、テーパリング開始前はやや軟調な動きが続いたものの、開始後は堅調な動きに。また、米利上げ開始前は上値の重い展開が続いたものの、利上げ開始後は総じて堅調な動きに(図表7)。
- Jリートは、テーパリング時には堅調な動きが継続し、終了後もしっかり。ただ、利上げ開始前の2015年の夏場は、中国株式の大幅下落が世界に波及したチャイナ・ショックを受け、大きく値を崩す動きに。利上げ開始前後は堅調な地合いが継続(図表8)。
テーパリングについては、11月のFOMCで開始が決定されるとの見方が強まっています。今後はテーパリングの開始時期以上に、テーパリングのペースが注目されそうです。来年半ばにもテーパリングが終了する見通しになると、その後の早期利上げが一段と意識されることになりそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/env/
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