今年序盤の株価と世界経済:底堅さの背景にあるのは何か?
株価は年初来上昇
今年、早くも約3分の1を経過しました。この期間を振り返ると、金融市場にとって悪いものではありませんでした。主要な株価指数は上昇し(図表1)、米欧の国債価格も上昇(利回りは低下)したのです。
特に株式市場は、意外なほどの強さを示した、と言ってよいでしょう。今年前半の相場はやや厳しい、との観測が、年初頃には見られました。そうした観測に反し、4月末時点で、多くの株価指数が顕著に上昇したのです。5月以降については予断を許さないものの、株式投資家はひとまず安どしているはずです。
世界経済の底堅さ
株高の背後にあるのは、まずは世界経済の底堅さです。実際、世界的なインフレ、米欧などの利上げ、米中の対立、各地での戦争や内戦といった多数のリスクにもかかわらず、世界経済は成長し続けています。
世界の3大経済圏は、今年1-3月期、いずれもプラス成長をとげました。すなわち、米国、中国、ユーロ圏の実質国内総生産(GDP)が、前期比で増加しました(図表2)。中国については、コロナウイルス対策の緩和に伴う成長であり、自然な動きです。一方、米欧経済の底堅さは、若干意外かもしれません。
米欧のプラス成長
米国やユーロ圏では、インフレ(物価高)が続いています。これを抑えるべく、中央銀行が昨年以降、急激な利上げを行っています。急激な利上げは多くの場合、マイナス成長(GDP減)をもたらします。
そうした見方に逆らい、米国やユーロ圏は、1-3月期にプラス成長を記録したのです。米国の場合、失業率の低さや賃金の増加などにより、個人消費が底堅さを維持しました。ユーロ圏については、昨年終盤からの暖冬などにより、エネルギー価格が軟調となっています。これらのことが、米欧経済を支えました。
米中対立が深刻化?
中国の場合、1-3月期の景気回復は市場の予想どおりでした。ただ、予想以上に中国経済は柔軟であるようです。例えば、3月の輸出は米国向けが前年比減となった一方、東南アジア向けなどが急増しました。
また、米国向けの輸出が不調となった主な要因は、米国経済が底堅いとはいえ緩やかに減速していることです。米中の経済対立が救いようのないほど深刻化しているから、ではありません。実際、米国の半導体企業などの売上高は依然として中国市場に相当依存しているというのが、世界経済における現実です。
分断回避への期待
中国市場との緊密な関係を維持せざるを得ないのは、欧州の自動車やブランド品の企業などについても同様です。「中国と米欧の対立」は、経済面に関しては、米欧や日本のメディアによる誇張だと言えます。
多くの市場参加者は、対立の深刻化を望んでいません。よって現在、世界経済の深刻な分断(米欧陣営vs.中国陣営)が回避されているのは、明るい事実です。これが回避されている限り、長期的にも世界経済は発展すると期待できます。今年序盤の株価上昇は、そうした期待を少なからず反映しているのでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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