金融危機回避?:不安は残るが、米国の預金者は冷静である模様

2023/04/03

3月は主要株価上昇

世界的な金融危機が発生する可能性は低下している、と言ってよいでしょう。3月前半に米国のいくつかの銀行が経営破綻に陥りましたが、それらが金融市場に壊滅的な混乱をもたらすとは考えにくいのです。

実際、米シリコンバレー銀行などの破綻は特殊なケースだと言えます。また、米政府などによる銀行支援策が講じられている中、米銀の際限なき破綻連鎖は回避できそうです。こうした見方を背景に、米国などの株価指数は3月に上昇を示しました(図表1)。「金融不安」は、全くの杞憂だったのでしょうか。

杞憂とは言い切れず

杞憂だった、とはまだ言い切れません。たしかに足元、金融不安は和らいでいますが、不安再燃の可能性が無くなったとは言えません。さらに3月の銀行破綻による米国経済への影響を、十分注視すべきです。

シリコンバレー銀行は、取引先として新興テクノロジー企業に偏っていた点などで、特殊な銀行でした。とはいえ、その破綻の大きな要因である米国の金利上昇は、ほかの中小銀行にも悪影響を与えかねません。昨年以降の市場金利上昇(米国債などの価格下落)による銀行資産の劣化が、引き続き懸念されるのです。

米銀の融資は慎重に

そうした懸念を背景に、中小の米銀から預金が一斉に引き出される可能性は、まだ否定できません。預金が大量に流出すれば、その銀行は融資抑制を強いられ、これは企業の設備投資などを圧迫するはずです。

預金の大量流出が発生しなくても、米銀は当面、融資に慎重となりそうです。3月にシリコンバレー銀行などが破綻したこと、かつ、それらの預金者を米財務省などが寛大に救済したことから、米銀の経営に対する世の中の目が厳しくなっています。その結果、リスクの高い融資を控える銀行が増えそうなのです。

預金者の心理が重要

米銀による融資抑制の程度や、それが米国経済へ与える影響の度合いについては、非常に不透明です。これに関しては米国のエコノミストによる様々な試算が見受けられますが、いずれも大雑把な推測です。

そのような影響を考えるにあたり、特に重要なのは、取引銀行の経営不安から米国人がどれほど預金を引き出すのか、です。これについては人々の心理に大きく左右されるため、たしかなことは誰にもわかりません。例えば米国のメディアが金融不安をあおるような報道を行えば、預金流出が加速しかねません。

預金者は総じて冷静

もっとも、この点については、あまり心配しなくてもいいのかもしれません。米国の主要メディアは今、金融不安をさほど大げさに取り上げていないからです(今の話題は、特にトランプ前大統領に対する起訴)。

そして多くの米国人は、シリコンバレー銀行などの破綻が自分に大きな影響を与える、とは考えていないようです(図表2)。つまり一般的な預金者は、パニックに陥っていない模様です。よって当面、米銀預金の大量流出が続く可能性は低いとみられ、壊滅的な金融危機が発生する可能性はさらに低いでしょう。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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