世界株の現状と展望:雇用、インフレ、株価の複雑な関係
2月の世界株は軟調
株式市場では、良い局面もあれば、悪い局面もあります。実際、1月は総じて株高となりましたが、2月はムードが変わり、軟調となっています(図表1)。3月以降の株価も、起伏に富む展開が予想されます。
1月に世界株が上昇した後、2月に失速したのは、主に次の理由によります。すなわち1月には、世界経済をめぐる様々な懸念が和らぎました。とりわけ米国や欧州のインフレや利上げという、世界中の投資家が懸念する材料のことです。ところが2月には、それらの懸念が再び強まり、株価を圧迫しています。
米雇用統計が転機に
潮目の変化をもたらしたのは、特に2月3日に発表された米国の雇用統計です。これは、金融市場で最も注目される指標の一つです。その1月分が米雇用情勢の驚くべき強さを示し、投資家が慌てたのです。
この統計は雇用者数の大幅増を示したほか、失業率は3.4%と約半世紀ぶりの低水準になりました。世間的な感覚では良いことですが、世間の感覚と金融市場の感覚は、必ずしも同じではありません。市場では、雇用の強さはインフレ率の高止まりを予想させ、中央銀行による利上げを懸念させることになります。
雇用と株価との関係
良好な雇用情勢は賃金増を促し、それはインフレ要因となります。賃金増は、個人消費を支えるからです。消費意欲が堅調であれば、多くの企業は、労働コストを転嫁するために値上げを行うことができます。
ただし、雇用と株価との関係は、単純ではありません。雇用の強さは景気を支えるので、それ自体は株価の上昇要因です。他方、景気の底堅さなどを背景に米国のインフレ率の高止まりが懸念されることは、株価の下落要因です。どちらが優勢となるのか、必ずしも自明ではありません(現在は後者が優勢ですが)。
米国債の利回り上昇
いずれにせよ、米国のインフレ率は当面、米連邦準備理事会(FRB)の目標である2%を大幅に上回り続ける可能性が高いでしょう。よってFRBは、少なくとも今年半ば頃まで利上げを続けるはずです。
利上げ見通しなどを反映する米国の国債利回りは、1月の低下後、2月には上昇に転じ、足元は昨年末の水準近辺に戻っています(図表2)。通常、国債利回りの低下は株高要因、利回り上昇は株安要因です。実際、国債利回りと株価は今年、逆相関(一方が上がれば他方が下がる)の関係が鮮明となっています。
不安定な上下変動か
3月以降の相場展開は、不透明です。まず、米国などのインフレ率に関し、正確な予測は困難です。米国などの景気についても、底堅さを当面維持する可能性が高いものの、悪化する可能性も否定できません。
インフレが鈍化して利上げ懸念が後退すれば、株高を促します。ただ通常、インフレの鈍化は景気減速に伴って起こるものであり、景気減速は株安材料です。実体経済と株価との関係も、単純ではないのです。よって先行き不透明感はしばらく残ると考えられ、世界株は当面、やや不安定な上下変動が続きそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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