中国をめぐる期待とリスク:世界経済の行方は中国次第か
中国に対する期待が優勢
世界経済の行方は、かなりの程度、中国次第と言えます。特に今年は、中国の景気が順調に回復すれば、世界経済は緩やかな成長を続けそうです。そうなれば世界の株式などに関し、明るい材料となり得ます。
金融市場などでは今、そうした期待が優勢です。昨年12月のいわゆる「ゼロコロナ」政策解除を受け、活動正常化に伴い中国の経済成長率が高まる、と期待されているのです。一方、米欧については今年、成長率が低下しそうです(図表1)。それだけに世界経済を支える観点から、中国景気の回復が期待されます。
香港株などが大きく上昇
「ゼロコロナ」政策の解除が表すのは、中国政府が目先の景気を優先する姿勢に転じた、ということです。そのような方針転換の是非はともかく、市場参加者はそれを歓迎し、中国株は大きく上昇しています。
特に香港ハンセン指数については足元、昨年10月末時点から50%近くも上昇しています(2月3日時点)。この株価指数は、中国本土や香港の代表的な企業で構成されています。「ゼロコロナ」政策の緩和・解除(緩和は11月に開始)などを受け、中国の景気回復期待が高まり、株価が上昇基調となったのです。
不動産部門の支援策など
中国政府の景気優先姿勢は、ほかにも様々な面で確認できます。例えば2021年から、政府は民間企業への取締りを強化しました(個人情報管理の過度な厳格化など)が、足元、それが緩和されているのです。
昨年11月には、不動産部門への支援策も導入されました(金融機関による融資を奨励、など)。中国では2021年に不動産開発大手「恒大集団」が経営危機に陥ったことなどで、住宅建設・販売の不振が続き、景気を圧迫しました。最近の不動産向け支援策は、景気回復を促す中国政府の明確な意思を表すものです。
政権の正統性根拠は何か?
中国政府が景気優先姿勢に転じたのは、切実な危機感のためでしょう。昨年、中国の経済成長率は3.0%にとどまり、政府目標の5.5%前後を大きく下回りました。目標を大幅に下回るのは、極めて異例です。
中国の政権に正統性を付与するのは、国に豊かさや秩序をもたらしている、という実績です。そのため、景気の長期低迷で貧困者が増え、統治権の根拠が損なわれるのを、回避せねばなりません。また「ゼロコロナ」の解除は、行動制限への不満から社会秩序が乱れるのを政府が恐れた、との事情もあるのでしょう。
幾つかのリスクもあるが
このように国民の生活や感情に配慮して政策調整が行われる点では、中国は民主主義的と言えるのかもしれません。ただ、米欧の体制とは大きく異なるため、米中対立が再び激化する恐れは否定できません。
また、中国で強力な変異ウイルスが発生し、世界を再び混乱させる可能性も、皆無ではありません。さらに中国景気の回復に伴い、資源需要が増加し、世界のインフレを悪化させる恐れもあります(図表2)。そういったリスクは残るものの、中国経済復調の理由が増えていることを、まずは歓迎すべきでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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