エリートの集い:ダボス会議は世界的な分断を緩和できるのか?
分断された世界にて
今年も、いわゆるエリートたちが、世界の難題について語り合いました。1月16-20日、恒例の世界経済フォーラム(ダボス会議)がスイスで開かれ、世界各国から政府高官や企業経営者らが参集したのです。
今回のテーマは、「分断された世界での協力」です。極めて適切なテーマ、と言えるでしょう。多くの国では今、政治思想や所得階層の違いなどにより、国内の亀裂が深刻です。また、政治体制や歴史解釈の相違などによって、国と国との対立も深まっています。そのような分断は、共通の課題の解決を妨げます。
国内や各国間の分断
多くの国は、景気低迷、所得格差、治安の不安といった問題をかかえています。国境をまたぐ問題としては、気候変動、ウクライナ戦争などの紛争、移民・難民、コロナウイルスなどの感染症が挙げられます。
それらの問題への対処では、土台となる共通認識が必要です。しかし各国内では、政府が社会保障などでどこまで介入すべきか、などをめぐる思想対立が、有効な経済対策を妨げています。また、環境への危機感では、国により差があります。現在の戦争については、ウクライナへの共感度は国によって様々です。
ポリクライシスとは?
ほかにも、世界は米国陣営と中国陣営に分断され、平和と繁栄が脅かされかねない、という懸念もあります。そのように根本的な問題が同時に多発し、かつ、相互に影響を与え合うのが、現在の世界情勢です。
そうした中で流行しつつあるのが、「ポリクライシス(polycrisis)」という造語です。これは、世界は同時多発的で複雑な危機(特に環境関連、図表1)に見舞われ、問題解決は困難を極める、といった状況を指しています。今回のダボス会議でも、ポリクライシスに対する懸念を、多くのエリートが表明しました。
経済面では良い動き
とはいえ、今回のダボス会議は、悲観ムード一色ではありませんでした。経済面で、良い動きが強まりつつあるからです。米国のインフレが鈍化していることや、欧州景気が底堅さを見せていることなどです。
中国景気が今年は回復するとの期待も、世界各国の企業経営者の心理を支えています。米中対立を米欧・日本のメディアは騒ぎ立てていますが、日米欧の財界人は、中国との対立を望んでいません。このように、メディアと財界人との間の分断も深まっている現実を、日本のメディアは客観的に報道すべきでしょう。
ダボス会議の意義は?
さらに、政治と経済との分断も目立つようになっています。今回のダボス会議では、参加を見合わせた政治家が多かった一方、約600人の最高経営責任者(CEO)が、(おそらく喜び勇んで)参加したのです。
主要7か国(G7)のトップのうち、今年の会議に参加したのは独首相だけでした。米大統領が参加しなかったのは、「エリートの自己満足」というダボス会議への批判に配慮したためでしょう。この会議は、世界の課題を整理する上で重要でした。しかし今のままでは、財界エリートの懇親会に成り下がりそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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