利上げ懸念で市場が混乱:FRBはもっと慎重になるべき

2022/10/03

株・債券が下落

多くの投資家は今年、苦戦を強いられています。実際、世界的に株価が下落し(図表1)、債券価格の下落(利回り上昇)も顕著です。しかし、金融市場の将来に深く絶望する必要は、おそらくないでしょう。

債券利回り上昇、株価下落は、米欧などの政策金利引上げや、それに伴う世界景気の後退懸念によるものです。たしかに、インフレ率(物価上昇率)が極めて高い中、それを抑えるための適度な利上げは、やむを得ません。ただし、大幅利上げ継続を見込んでの株安・債券安は、今後修正されるかもしれません。 

利上げラッシュ

米国株は6月中旬頃に底を打ったように見えましたが、8月後半、再び下落基調に転じました。特に、米連邦準備理事会(FRB)議長らが、大幅な利上げの必要性をそれまで以上に強調し始めたからです。

FRBは実際、9月に0.75%の利上げを決定しました(図表2)。その前後にも、ユーロ圏、英国など多数の国・地域の中央銀行が、利上げを決めました。インドネシア、南アフリカなど新興国でも、利上げが相次いでいます。利上げは消費や投資などを抑制するため、当分の間、世界景気の減速が見込まれます。

利上げへの懸念

しかし世界的な利上げラッシュは、今後徐々に落ち着く可能性があります。利上げを急ぎすぎると過度に景気を冷やし、本末転倒になりかねない、といった懸念が、米国などで増えてくるとみられるからです。

各国の中央銀行は、「横並び」で政策を行っている面があります。FRBが大幅な利上げを進めているので自国もそうしよう、といった安易な考えで利上げを実施している国も、少なくないでしょう。よって、FRBが国内の懸念などに配慮し利上げペースを緩めれば、他国も利上げに慎重となる可能性があります。

円安圧力は残る

ただ、日本では、他国の利上げにもかかわらず、日銀が金融緩和を続けています。これは日本株が今年、相対的には底堅いことの一因です。9月22日にも日銀総裁は、超低金利政策の維持方針を表明しました。

そして、金利の高い国の通貨が買われ、低い国の通貨が売られるという動きに基づくドル高・円安圧力が、まだ残っています。22日に政府・日銀がドル売り、円買いの介入に踏み切ったものの、円安を止めるのは容易ではありせん。明確な円高基調に転じるとすれば、FRBが利上げペースを緩めたときでしょう。

様相が変わった

よって、市場が落ち着き、特に米国の金利上昇が一服する(→おそらく株価反発)ことは、投資家と日本政府・日銀が共通して持つ願いです。FRBとしても、市場を混乱させるのは、本意ではないはずです。

今年序盤には、米国のインフレが加速したのは利上げを先送りしたから、とFRBは批判されました。しかし現在は、急激な利上げの弊害が懸念されます。これまでの利上げが実体経済に影響を及ぼすまでには、相当の時間を要します。そうした影響を慎重に点検すべく、FRBは利上げペースを緩めるべきです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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