「悪い円安」に備えて:資産運用で考えたいこと
円が最弱通貨に
円の価値が下がるのは、本来、日本人にとって残念なことです。この当然のことが、最近ようやく理解されるようになってきました。また、円安に備えた資産運用が必要か、との問題意識も広がっています。
円は今年、対米ドルで約10%の下落と、主要通貨の中で最弱です(図表1)。とりわけ3月以降に円安が加速し、ドル円は4月20日に1ドル=129円台をつけました。足元、円がやや買い戻され127円台となっていますが、依然として約20年ぶりの円安水準です。円安圧力は、今後も残る可能性が高そうです。
円安は阻止可能?
円安の根底にあるのは、金融政策の違いです。米国がインフレを抑制すべく利上げを開始したのに対し、日本では、日銀が超低金利政策を続ける姿勢を維持する中、日米金利差が拡大しているのです(図表2)。
そして、より高い収益が見込める米国資産の魅力が増す、という思わくで、ドルが買われ、円が売られています。このため、日本政府・日銀が極端な円安を阻止したいのであれば、日銀の利上げが先決です。市場原理に逆らう為替介入(通貨当局によるドル売り・円買い)を現時点で行うのは、全くの筋違いです。
円安と日本経済
しかし、政府・日銀は本当に円安を阻止したいのでしょうか。むしろ、適度な円安は歓迎でしょう。円安は、海外の売上比率が高い(かつ、政権への影響力が大きい)企業には、通常、良いことだからです。
これは、海外で得たドルなどの外貨を円に換える際、外貨高の方が円建ての金額が膨らみ、決算上の売上高が増えるためです。この点は、生産拠点が海外にあっても同じです。ただ、その場合、日本の輸出や生産は特段増加しません。よって、グローバル企業の好決算は日本全体に良いこと、とは言い切れません。
円安で物価上昇
逆に、現在は円安の悪い面が目立っています。ウクライナ紛争などで国際的な資源・食料価格が上昇する中、円安が、それらの国内価格上昇に拍車をかけているのです。日本の生活者には、迷惑なことです。
とはいえ先述のとおり、円安阻止に向けた政府の本気度は、定かではありません。また、為替介入のみならず日銀の利上げも、今は困難な選択肢です。利上げは、企業や個人、政府の借入れコスト(政府の場合は国債金利)上昇をもたらします。これに耐えられるほど日本経済は強いのか、が疑問視されるのです。
海外投資を検討
つまり円安を阻止しようにも、すぐに実行できる手段は、ほとんどありません。他方、米国は利上げを加速させつつあるので、ドル高・円安圧力は当面残りそうです。長期的にも、それに備えたいところです。
この点、円安は海外の株式・債券などの為替差益をもたらします(ただ、現地資産の下落が為替差益よりも大きくなれば投資損失に)。今後は円高局面もあり得ますが、円が積極的に買われ続けるほど、日本経済は長期的に有望でしょうか。必ずしもそう思わなければ、円安に備えた海外投資も検討すべきでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。
しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会