ウクライナ紛争と世界:米欧、中国、日本の難しい選択
緊張は長期化へ?
ウクライナでの紛争がどうなるのか、明確なことはわかりません。とはいえ、金融市場は、まだパニックには陥っていません(図表1)。それでも、緊張の長期化はおそらく避けがたい、と言わざるを得ません。
ただ、ロシアのプーチン大統領の自信は、やや揺らいでいるはずです。ウクライナは一気に制圧できる、という目論見が外れているからです。進軍を阻んでいるのは、ウクライナ人の頑強な抵抗のほか、ロシア軍の低い士気です。ロシアの多くの軍人は、なぜ隣国と戦わねばならないのか、理解に苦しんでいます。
米国の国内事情
紛争の行方を結局決定づけるのは、プーチン氏の意向です。とはいえ、ウクライナの抵抗力も、事態を大きく左右します。さらに、紛争に対する米国や欧州、中国など主要国・地域の対応も、極めて重要です。
米国のバイデン大統領は、困難な判断を迫られています。民主主義vs専制主義との図式を好む同大統領としては、専制的なプーチン氏を、厳しく非難せねばなりません。しかし、対ロシアの経済制裁でエネルギー価格がさらに高騰すれば、インフレが米国民を苦しめます。そのため一層の制裁には、まだ慎重です。
欧州の死活問題
エネルギーに関して、ロシアへの依存度がとりわけ高いのが、欧州連合(EU)です(EUの天然ガス需要に関し、ロシア産は約3~4割)。それだけに、ロシアへの対応は、EUにとって悩ましい限りです。
とはいえ、EUはロシアに近接しているため、戦場の拡大を防ぐのが死活問題です。また、人権尊重といった点でも、EU主要国は、米国以上に熱心です。このためEUは、結局、ロシアのエネルギー産業に対する制裁に踏み切るかもしれません。そうなれば、ガスや原油などのさらなる高騰をもたらすでしょう。
中国と世界秩序
中国とロシアの関係は、より複雑です。米国への反発といった点で、ロシアと中国は「同志」です。よって、米欧とロシアの緊張がさらに高まれば、中国は、ロシアからの天然ガス輸入などを増やすはずです。
しかしながら中国は、ロシアと完全に歩調を合わせるわけにもいきません。中国は、ウクライナと親密な経済関係にあるからです(図表2)。また、経済超大国という中国の現在の地位は、経済のグローバル化に乗って得られました。このため中国は、世界経済の現行体制を、ロシアによって乱されたくないのです。
日本は武装強化?
日本については、今般の紛争への影響力は大きくありません。ただ、逆に、紛争が日本に及ぼす影響には要注意です。例えば、不穏な国際情勢を受けて、国内の武装を強化すべきという声が大きくなり得ます。
そのようにこの紛争は、思想・政治・経済・軍事などあらゆる面で、世界各国に対し困難かつ重大な選択を迫ります。よって、戦闘がロシア・ウクライナ間に限定されたとしても、自国にはあまり関係がない、と言えません。したがって、金融市場でもまだ多くの波乱が生じる、と予期しておいた方がよさそうです。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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