どうなる?ウクライナ情勢:世界経済と金融市場への影響は?
ロシア軍の侵攻
戦争は、誰の利益にもなりません(軍需産業などを除く)。2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻も、戦場がさらに広がれば、ウクライナ人などの犠牲を増やすだけでなく、金融市場の混迷を深めます。
ただ、ウクライナは、米欧の軍事同盟である北大西洋条約機構(NATO)の加盟国ではありません。したがって、NATO軍には、ウクライナ軍とともにロシアと戦う義務も意思も、今のところありません。しかし、国際秩序への重大な挑戦であるロシアのウクライナ侵攻を、米欧は見過ごすわけにはいきません。
米欧による制裁
そのため米欧は、対ロシアの経済制裁を強めています。とはいえ今は、金融面の制裁(→制裁対象銀行の国際市場における活動が困難に)などにとどまっており、ロシア経済を破滅させるほどではありません。
ロシア経済の中核はエネルギー産業などですが、それらに対する直接的な制裁には、米欧はまだ慎重です。原油・天然ガスなどの資源、小麦などの農産物において、ロシアは世界有数の生産国です。対ロシアの経済制裁によってそうした商品の供給が急減し、商品高が加速する事態を、米欧は恐れているのです。
米欧の経済事情
この意味で、ウクライナ紛争は最悪のタイミングで起こった、と言えます。紛争の前から、金融市場で警戒されていたのは、米欧などのインフレ(物価上昇)です。商品高で、それが一段と加速しかねません。
ロシアのプーチン大統領は、米欧のそのような経済事情をよく把握している模様です。そうした事情のため米欧はロシアの要求に結局譲歩するだろう、といった認識も、プーチン氏の強硬姿勢の背後にあるのでしょう。ロシアの要求とは、ロシア周辺国でのNATOの軍事展開を大幅に縮小させること、などです。
金融市場の反応
以上のことから、ロシアvs米欧という大国間の戦争は、おそらく避けられそうです。ロシアに向けた経済制裁は慎重であることも踏まえれば、今般の紛争による世界経済全体への影響は、まだ限定的でしょう。
主要国では、対ロシアの貿易は大きくありません(図表1)。このため、紛争でロシア経済が混乱したとしても、世界経済への打撃は当面、限られそうなのです。そのような見方から、ロシア株など以外は、金融市場の変動は、案外抑制されています(大戦回避への期待などで米国株は足元、小幅に上昇。図表2)。
ロシアの使命は
ただし、これからの相場展開はプーチン氏の動きにかかっており、それを楽観することはできません。同氏をウクライナ侵攻に駆り立てているのは、政治・経済に関する合理的な計算だけではないからです。
長年の経験と考察で、米国を退け大ロシアを再興するのが自らの使命、と同氏は確信したようなのです。よって、ウクライナの首都キエフを今後制圧したとしても、それだけでは満足しないかもしれません。しかし、同氏の本当の使命とは、野望を慎み、さらなる侵攻を諦め、世界の破滅を阻止することでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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