オミクロンが世界を襲う:この冬は、株価の大きな変動を覚悟

2021/12/06

ウィズコロナの代償

 新型コロナウイルスが発生してから、約2年がたちました。日本を含む国々は、その完全な打倒をすでに諦め、「ウィズコロナ」を選んでいます。そのため、ウイルスが次々に変異することは、ほぼ必然です。

 「オミクロン型」の発生も、驚くべきことではありません。ただ、これに応じたワクチンが出回るのは、来春以降になりそうです。また、すでに今秋以降、デルタ型の感染が欧州などで増加しています(図表1)。よって、今は感染が抑制されている日本も、可能な限り、リモートワークなど予防策を再徹底すべきです。

金融市場は不安定に

 オミクロン型には、まだ不明な点が多数あります。今後の感染実績や研究により、その感染力はデルタ型を大きく超える、と断定されるかもしれません。ただ、致死率は、デルタ型より低い可能性もあります。

 それらが明確になるまでには、向こう数週間以上を要します。このため金融市場では当面、不安定な動きが増えそうです。実際、11月26日以降、米国株などは上下に大きく変動しています(図表2)。米国株についてはもともと高値警戒感があったため、今後も年末にかけ、売却が一時加速するかもしれません。

これからの世界経済

 市場参加者が慌てたのは、オミクロン型については、その感染力が危惧される上、既存のワクチンがあまり効かない可能性もあるためです。それらが事実だとすれば、経済予測のシナリオが怪しくなります。

 これまでの基本シナリオは、デルタ型などの感染が続く中でも、ワクチンの普及やウイルスへの「慣れ」のため、世界経済の回復傾向は続くだろう、というものでした。感染や重症化を抑える既存ワクチンの効果が、オミクロン型に対しては大きく低下するのであれば、そういったシナリオを見直さねばなりません。

物価見通しも複雑に

 オミクロン型は、金融市場で注目されているテーマについても、見通しを複雑にします。サプライチェーン(供給網)、インフレ(物価上昇)、米欧などの金融政策、といった互いに関連するテーマのことです。

 感染がアジアで拡大すれば、中国やベトナムの工場や港湾が再閉鎖され、サプライチェーンが再度途絶しそうです。それは、供給制約によりインフレ率を高めます。一方、世界景気の減速懸念で原油価格が下落しており、これはインフレ率の低下要因です。どちらが優勢となるのか、現時点では何とも言えません。 

株価を支える要因も

 米連邦準備理事会(FRB)は今、金融引締めに前のめりです。しかし、オミクロン型の拡大で景気や物価の先行きがより不透明になれば、利上げを先送りするでしょう。そうなれば、世界株を支援します。

 また、米国政府は現在、強烈な活動制限を行わない方針です。日本政府なども、渡航規制にとどめ、変異型の新情報を待つ姿勢です。よって、この冬を耐えた後、世界経済はまた回復基調を強める、と予想されます。そして、11-12月の株価変動は行き過ぎだったと、投資家は、来春には胸をなでおろすはずです。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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