試される価値観:ミャンマーとアフガニスタンの経済危機

2021/10/18

ある国の危機は世界の危機

自分と関係のないことに関心を持つのは、難しいものです。しかし、少なくとも間接的に、世界中の出来事は、互いにつながっています。よって、他国が苦悩している経済危機に、無関心ではいられません。

もっと注目されるべきは、ミャンマーとアフガニスタンです。両国では今年、国軍や武装勢力が政権を奪った後、多数の人が犠牲となり、経済も今、危機的な状態です。それらを放置するのは、極めて危険です。両国民の生命が危ういだけでなく、近現代を基礎づける人権などの価値観が、動揺しかねないのです。

ミャンマーの苦しみは続く

ミャンマーでは、2月、国軍がクーデターを起こし、アウンサンスーチー氏の率いる政権を倒しました。これは一時、米欧や日本のメディアも派手に報じましたが、その後、関心が急速に薄れたように見えます。

しかし、ミャンマーの人々は、今も苦しんでいます。軍事政権に対するデモなどで、死者数は8月末、1,000人を超えました。また、軍事政権、前政権、少数民族の間における不和がからみ合い、各地で抗争が起こっています。それらのため経済の混乱が続く、との観測で、通貨価値が急落しています(図表1)。

アフガニスタンの経済危機

ミャンマーへの国際的な関心が薄れた背景には、8月以降、アフガニスタンへ関心が移った、という事情もあります。実際、米軍のアフガニスタン撤退を受けたタリバンの全土制圧は、あまりに衝撃的でした。

アフガニスタン情勢も、混迷を深めています。タリバンはイスラム急進派ですが、現在は極力、暴力を控えています。しかし国際社会は、タリバン政権を公式に承認しておらず、開発援助に頼ってきたアフガニスタン(図表2)への正式な供与は、ほぼ停止しています。そのため同国の経済も、崩壊の瀬戸際です。

建前と秩序、どちらが重要?

ミャンマーもアフガニスタンも、選挙によって選ばれた政権が、武力によって倒されました。そのため、選挙を通じた民主主義にこだわる米欧諸国などは、新しい政権を簡単に承認するわけにはいきません。

しかし、社会の秩序や経済の安定を回復するには、両国の新政権を認めた方がいいのかもしれません。そうしなければ、資金援助や貿易・投資を公然と行うのが難しいからです。このように国際社会は、「民主主義の建前」と「秩序と安定」のどちらを優先するのか、という、ジレンマ(板挟み)の状況にあります。

日本は人権を重んずるのか?

それでも結局、国連に代表される国際社会は、ミャンマーとアフガニスタンの新政権を、承認する可能性が高いでしょう。特に米国が、他国の体制を強引に変える意思と能力を、もはや失いつつあるからです。

ただし、新政権が承認されても、両国の経済運営などが軌道に乗るには、長い時間を要します。それまでの間、経済危機や内戦で両国の難民が増えれば、日本も、難民受入れの判断を迫られます。人権が普遍的な価値だとすれば、他国の不幸は自分と無関係であり得ず、それについて、無関心ではいられません。

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

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