バイデン氏、正念場:重要なのはコロナウイルスと経済
支持率低下が鮮明に
バイデン米大統領は、今年1月の就任後、最も厳しい正念場を迎えました。同大統領は、就任当初の勢いを取り戻せるのでしょうか。それとも、失策や挫折が続き、米民主党に暗い影を落とすのでしょうか。
8月には、大統領の実績を「支持する」が「支持しない」を初めて下回りました(図表1)。このままでは来年秋の中間選挙において、バイデン氏の属する民主党は、上院・下院の一方または両方で少数党に転落しそうです。過去を見ると、大統領支持率と中間選挙の結果には、かなりの相関が認められるのです。
テロが再発するのか?
直近の支持率低下の主要因は、アフガニスタンからの米軍撤退をめぐる混乱です。撤退は8月30日に完了しましたが、多くの死傷者が出てしまったので、撤退は拙速だった、との評価が米国でも主流です。
ただ、これは米国民にとり遠方の出来事です。そのため、イスラム過激派の大規模なテロが国内で勃発しない限り、政局に影響を及ぼし続ける可能性は低いでしょう。2001年のテロの後、米国は、国内の安全保障体制を極度に引き締めたことなどを踏まえると、そうしたテロの恐れは当面は小さい、と言えます。
感染再拡大が顕著に
また、多くの米国民が重要視するのは、外交よりも、健康や雇用など身近な問題です(図表2)。その意味で米国は、内向きの国です。しかしそれらの側面でも、バイデン氏は現在、厳しい事態を迎えています。
健康面では、コロナウイルスの感染者や重症者が急増しています。実は、大統領支持率が低下し始めたのは6月後半であり、米国で感染増の兆候が生じた時期と一致します。よって、支持率が回復するか否かは、アフガニスタン情勢よりも、ワクチンのさらなる普及などで感染を抑制できるか、にかかっています。
米経済に減速の兆し
バイデン政権にとって悩ましいのは、強硬なワクチン反対派の信念が固いことです。また、日本同様、目先の経済にも配慮せざるを得ません。このため、活動制限を再強化することに対し、同政権は慎重です。
というのは、米国でも、経済の先行きに関し不透明感が増しているからです。要因の一つは、3月に成立した所得補助策などの効果一巡です。さらに、感染症の拡大で、消費や雇用が慎重化しつつあります。そうした中で活動制限を再強化すれば、景気を一時的に冷やし、政権支持率を一段と低下させかねません。
追加経済対策に注目
それだけに、バイデン政権が推し進める追加経済対策の成否が、極めて重要です。1兆ドル規模のインフラ投資策、および3.5兆ドル規模の社会保障拡充策・環境対策が、近々成立する可能性があるのです。
それらは中長期にわたる施策であり、米景気を瞬時に大きく押し上げるものではありません。とはいえ、医療や環境、教育など、米国民が重要と考える項目が満載されています。よってこれらの策が成立すれば、アフガニスタン問題などによるバイデン大統領の失点も、相当程度は埋め合わせることができるでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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