世界の法人税改革:バイデン政権がまたやった!
連携強化が表明されたG7会議
わずか1年ほどで、世界は劇的に変わりました。第一に、コロナウイルスのためです。第二に、それと比べれば小さなことですが、米国でバイデン政権が誕生し、革新的な策を次々と打ち出しているためです。
実際、バイデン政権は、前政権との異質性を様々にアピールしています。特に民主主義の重視、および、欧州の同盟国との連携強化についてです。6月11-13日の「主要」7か国(G7)首脳会議でも、同政権の主導で、「民主主義国の結束」が強調されました。「米国第一」のトランプ前政権とは、雲泥の違いです。
公平性向上を目指す法人税改革
首脳会議の前週には、G7の財務相による会議が開催されました。その会議でも、経済面でバイデン政権を支えるイエレン米財務長官が、国際連携の視点に立つ画期的な策の合意形成を、強力に推進しました。
すなわち、国際的な法人税の枠組みに関し、G7で合意に至ったのです(ただし、その成立には、ほかの国々の合意や、各国議会の承認も必要なので、実現するとしても1年以上を要する見込み)。これは、多国籍企業の過度な節税を阻止し、各国内の格差を抑え、民主主義的な公平性を高めるためのルールです。
第一の柱:実状に即した課税権
今般の課税ルールは、二本柱で構成されています。まず、企業(約100社の世界的大手)が実際に事業を営み、商品やサービスを販売している国々が、その収益に対する課税権をシェアする、というものです。
現状、タックスヘイブン(低税率または無税の国・地域)に子会社を設立し、収益を会計的にそこへ集約することで、企業は節税できます。今般のルールの狙いは、そうした節税の抑止です。各国のインフラ(道路や通信網等々)を利用し稼いでいる以上、その利用の対価として、各国に納税すべきだからです。
第二の柱:共通最低税率の設定
二番目の柱は、法人税率に関し、各国共通の最低水準(15%以上)を定めるものです。目的は、企業誘致のための税率引下げ競争を阻止することです。そうした競争は結局、多くの国の税収を減らすからです。
グローバル企業は納税義務を十分に果たしていない、という批判は、近年、高まる一方です。特に米国では、個人所得税とは対照的に、法人税のウエイトが低下し(図表1)、不公平感が増しています。二本柱からなる今般のルールは、その是正を企図します。日本を含むG7が連携し、大きな一歩を進めたのです。
多国籍企業も歓迎すべき税改革
それを促したのは、まず、昨年来のオンライン化(と節税)で巨額の利益を得ている、テクノロジー各社への反発です。さらに、バイデン政権の強い意思です。ルールの策定には、米国の関与が必須なのです。
企業としても、国際ルールが明確になるのは、望ましいことです。そのため、税負担が増えるとしても、株価(図表2)にネガティブとは言えません。何より、世界が必要としているのは、公平な税制です。したがって、米国主導でこの税改革が実現すれば、バイデン政権の偉業の一つとして、歴史に残るでしょう。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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