インフレリスク再考:コモディティーブームの過熱を受けて
背景には需要増・投機増・供給制約
世界景気の回復による需要増などを背景に、コモディティー(商品)価格が堅調です。金属、穀物、原油、木材などの価格が、コロナウイルス懸念で急落した昨年3月以降、急上昇しているのです(図表1)。
また、特に米国において、景気過熱などによるインフレが警戒されています。このため、インフレに伴い価格上昇が見込まれる各種商品への投機が増加し、商品高を助長しています。さらに、コロナウイルスの感染拡大に伴い、昨年、商品の生産や在庫が抑制されました。これによる供給制約も、商品高要因です。
まず中国景気の回復が商品高を主導
商品需要の増加は、まず中国景気の回復に後押しされました。中国は、多くの資源や穀物の消費量において世界一です。その景気が、昨年春のコロナウイルス危機を克服した後、顕著に回復しているのです。
中国景気の勢い、およびそれに伴う商品需要は、いまも特段衰えていない模様です。例えば、4月の生産者物価指数は前年比プラス6.8%と、大幅に上昇しました(図表2)。その背景としては、工業生産や建設における好調持続により、銅や鉄鉱石など原材料への需要が増えている、といった点が挙げられます。
中国の穀物需要増が米国農家を潤す
中国の旺盛な商品需要は、穀物など食料にも及んでいます。このことは、米国の農家などにも、多大な恩恵を与えています。例えば最近、米国から中国へのコーン(とうもろこし)の輸出が極めて堅調です。
コーンは、家畜の食料としても、重要な役割を担っています。中国で特に増えているのは、そうした用途のコーン需要です。それらを受け、コーンの国際価格は、年初来で一時50%ほど上昇しました。このような穀物ブームで潤っている米国の農家は、「お客様」である中国の好景気を、大歓迎しているはずです。
生活様式の変化に伴い木材需要増加
もっとも、商品価格の上昇は、中国景気の拡大のみによるのではありません。とりわけ、米国における景気拡大観測、および社会構造の変化も、需要増などを通じ、様々な商品価格の上昇に寄与しています。
それを表すのが、この1年間で4倍以上に高騰した、米国の木材価格です。その背後には、住宅建設のブームがあります。米国の戸建て新築住宅の大半は、骨組みが木製です。そして、戸建て建設を促しているのは、在宅勤務への移行による郊外の広い住宅の需要増という、生活・勤務様式の変化に伴う動きです。
商品高によるインフレリスクを注視
商品価格の上昇は、鉱山会社や農家、資源国(例えばオーストラリアのほか、南アフリカなど多くの新興国)にとっては、基本的に朗報です。ただ、世界経済や金融市場に対し、注視すべき問題を提起します。
つまり、原材料・燃料価格高を受け、企業がそれを末端価格に転嫁すれば、消費者物価の上昇(インフレ)に拍車をかけます(→米国などの金融引締め?)。今後は、鉱業・農業の供給回復が商品高を抑える可能性が高い一方、投機的な動きにより商品高が一層過熱する可能性もあるため、その動向には要注意です。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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