『孫氏』を読む:中国の兵法を知るために

2021/03/15

戦いが長引くほど気力をくじく

戦争が長引けば、兵は疲弊し、国の経済は窮乏する。そう説くのは、中国古代の兵法書『孫氏(作戦編)』です。コロナウイルスとの戦いでも、それが長引くほど、国民は疲れ、経済への負荷が大きくなります。

現代の中国も、そうした孫氏の教えを、忠実に心がけているように見えます。ウイルスが流行した約1年前、世界が驚く厳しいロックダウンを一気に実施することで、感染を比較的短い期間で抑止したのです。その結果、中国経済は、ウイルスとの長期戦で疲れが蓄積した日米などよりも、先に急回復へ転じました。

激流の勢いは重い岩をも動かす

また、戦いでは、『孫氏(兵勢編)』が言うように、岩を漂わせる激流のごとき「勢い」が大切です。ウイルスとの戦いを制し、経済が回復をとげる中国の勢いについても、衰える兆しがほとんど見られません。

実際、中国経済は、輸出主導で拡大し続けています。消費も回復傾向にあるため、国内総生産(GDP)は今年、8~9%の高成長が十分可能です。そうした中、今月5~11日、北京で全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開催されました。そこで見て取れたのも、時代の勢いは東洋にあり、という自信です。

よく攻め、よく守り、勝利する

ただし、今回の全人代で採択された今年のGDP目標は、「6%以上」という成長率です。これは、かなり控えめな目標です。コロナウイルスが再び爆発的に広がるようなことのない限り、達成は容易でしょう。

このような目標は、適切な判断に基づきます。いまの中国には、経済成長の持続に加え、過剰投資で膨張した債務(図表1)の削減も必要であるからです。そうすることで、安定的な成長が可能となります。『孫氏(軍形編)』が教えるように、「攻撃」(成長の追求)とともに、「防御」(リスク管理)も重要です。

相手と自己を知れば危うからず

また、『孫氏(謀攻編)』は、相手と自己の実力を把握せよ、と説きます。たしかに「自己の実力」を、中国は冷静に見ています。それを表すのが、この全人代で採択された新5か年計画(2021~25年)です。

その中で最も注目すべきは、先端技術において自立を果たす、との目標です。中国は超大国になったとはいえ、半導体分野などの実力は十分でなく、米国や台湾などの技術に依存しています。そのような自国の弱点を、中国はよく理解しています。このため今般、研究開発費を増やしていく計画が採択されました。

戦わずして勝つのが最善である

ただ、その発表は、淡々と行われました。背景にあるのは「中国製造2025」への反省でしょう。2015年に示されたその方針は、技術面の覇権奪取に向けた野心表明と受け止められ、米国を警戒させたのです。

中国は、現状のトレンドが続けば、10年以内に名目GDP(図表2)で米国を追い越すことが、ほぼ確実です。よって、米国を刺激して現在の「勢い」を乱すのは、極力回避したいはずです。やはり『孫氏(謀攻編)』にあるとおり、中国にとって最善なのは、戦わずして勝つ(静かに米国を追い越す)ことなのです。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/newest_report/contents_type=8&type=topics

 

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
しんきん投信「トピックス」   しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ