揺るがぬ決意:バイデン米政権を侮ることなかれ

2021/03/01 <>

米経済変革の好機に

つらい災いは、飛躍のきっかけに転じ得ます。コロナウイルスで多数の死者を出している米国も、この逆境を、好機に変えられるのでしょうか。より強く、公平なものに、米経済を変革できるのでしょうか。

今月中の成立が予想される1.9兆ドル規模の経済対策についても、緊急時だからこそ正当化できます。さらに、バイデン政権は、インフラ投資やクリーンエネルギー化などからなるプランを、近々発表する見込みです。それら一連の策は、米経済の実力を底上げし、かつ、格差を是正する可能性を秘めています。

追加対策は不可欠?

平時であれば、それほどの経済対策を行うのは、常識に反しています。米国では、すでに昨年、トランプ前政権が、計3兆ドル超の経済対策を導入しています。これにより、財政赤字が膨張しているのです。

金融政策に関しても、金融市場が混乱した昨年春以降、前例なき規模で緩和策が実施されています(米連邦準備制度理事会(FRB)による利下げ、資産買入れなど)。それらが寄与し、米景気は足元、欧州や日本などに比べると、決して悪くありません。したがって、大規模な追加対策は、不可欠とは言えません。

金融危機後の反省で

しかし、米国はまだ危機から脱しておらず、さらなる経済対策が必要だと、バイデン政権、FRBなどは見ています。ただし、同政権が目指しているのは、目先の景気刺激やウイルス対策だけではないのです。 

企図されているのは、米経済の実力向上や格差是正などです。そのためには、教育・医療の充実や、老朽化したインフラの整備などが有効です。また、バイデン政権の念頭にあるのは、金融危機時(2008~09年)、経済対策が不十分だったがゆえに、その後、米国は低成長にとどまった(図表1)、との反省です。

来年の議会選を意識

政策実行を急ぐのは、政治的な理由もあります。現在審議中の策には、所得補助や育児支援などが含まれ、米国民の多数が強く支持しています。よって、それが成立すれば、政権支持率の上昇を期待できます。 

それでも、来年秋の中間選挙(連邦議会選)で、与党の民主党が勝つ保証はありません。このため、大統領職・上院・下院の全てを民主党がコントロールしている今のうちに、可能な限り多くの施策を、実現せねばなりません。所得格差の是正や気候変動問題への取組みなど、同党が悲願とする施策の数々です。

インフレリスクは?

ただ、追加の経済対策により財・サービスに対する需要が急増すれば、インフレ率が急上昇する恐れもあります(図表2)。それを抑制すべく、FRBが金融引締めに転じた場合、米景気が急失速しかねません。

とはいえ、FRBは、一時的なインフレを容認する意向です。たしかに、米経済の実力を高める上で、インフレリスクは、引き受けるべきリスクです。また、バイデン政権・民主党も、ようやく得た悲願実現の好機を、みすみす逃せません。その強い決意、そして米経済が復活する可能性を、侮ってはなりません。

 

図表入りのレポートはこちら

https://www.skam.co.jp/report_column/topics/

 

 

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融市場の注目材料を取り上げつつ、表面的な現象の底流にある世界経済の構造変化を多角的にとらえ、これを分かりやすく記述します。
<本資料に関してご留意していただきたい事項>
※本資料は、ご投資家の皆さまに投資判断の参考となる情報の提供を目的として、しんきんアセットマネジメント投信株式会社が作成した資料であり、投資勧誘を目的として作成したもの、または、金融商品取引法に基づく開示資料ではありません。
※本資料の内容に基づいて取られた行動の結果については、当社は責任を負いません。
※本資料は、信頼できると考えられる情報源から作成しておりますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。また、いかなるデータも過去のものであり、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。
※本資料の内容は、当社の見解を示しているに過ぎず、将来の投資成果を保証・示唆するものではありません。記載内容は作成時点のものですので、予告なく変更する場合があります。
※本資料の内容に関する一切の権利は当社にあります。当社の承認無く複製または第三者への開示を行うことを固く禁じます。
※本資料にインデックス・統計資料等が記載される場合、それらの知的所有権その他の一切の権利は、その発行者および許諾者に帰属します。

しんきんアセットマネジメント投信株式会社
金融商品取引業者 関東財務局長(金商) 第338号
加入協会/一般社団法人投資信託協会 一般社団法人日本投資顧問業協会