トランプ劇場終幕:彼はとんでもないものを残したが
トランプ氏の支持者が、「民主政の城」を襲撃
1月20日、米国の大統領が、共和党のトランプ氏から、民主党のバイデン氏に代わります。ただし、トランプ氏は、とんでもないものを米国に残しそうです。米国流民主政への不信と、党派間の不和です。
トランプ氏は、大統領選は不正だと主張し、相当数の人がそれを信じています(図表1)。そして1月6日、同氏はホワイトハウス前で演説を行い、盗まれた選挙を止めろ、と叫びました。これで興奮した同氏の支持者が、バイデン氏勝利の認定を阻止すべく、「民主政の城」と言うべき議事堂を襲撃しました。
民主党支持者と共和党過激派との、深い亀裂
「不正選挙」を裏付ける確たる証拠は、全くありません。そのため、騒乱が収まった後、バイデン氏の大統領選勝利が議会で認定されました。しかし、米国は今後、党派間の融和を図れるのでしょうか。
バイデン陣営の組織的な不正を信じる人は、バイデン新大統領の正統性を認めないでしょう。一方、民主党支持者の多くは、議事堂襲撃事件を受け、過激な共和党支持者に対する軽蔑を、さらに深めるはずです。よって、党派間の融和は難しい、と悲観的に見る人が多いのは(図表2)、無理もありません。
決選投票を受け、民主党が政策主導権を掌握
とはいえ、政治の機能不全に関しては、改善を十分期待できます。大統領職・下院に続き、上院も民主党が制したからです。その決着をつけたのが、1月5日にジョージア州で行われた上院決選投票です。
この投票で争われた2議席とも、接戦の末、民主党候補者が獲得したのです。結果、上院は、民主党・共和党が50議席ずつで並びました。ただし、採決票が同数の場合には、上院議長を兼ねる次期副大統領(民主党のハリス氏)が、決裁票を投じます。このため事実上、民主党が上院をコントロールできます。
共和党の復権には、「トランプ離れ」が不可欠
ジョージア州は元来保守的なので、その上院を民主党が制するとは、数年前までは考えられませんでした。今回の勝因となったのは、黒人の投票率向上や、都市郊外の白人による民主党支持の高まりです。
共和党支持者であっても、「法と秩序」を重んじる米国民の間では、トランプ氏への失望が生じています。議事堂襲撃事件は、それに拍車をかけそうです。共和党議員らがこれを重く受け止め、不和をあおるトランプ流の政治手法から決別すれば、良識的な保守派へ同党が戻る可能性も、ゼロではありません。
「国内の不和」と「株価の堅調」は、併存可能
株式市場については、ジョージア州の投票結果を、前向きに捉えています。上下両院を民主党が制したため、バイデン新政権の機能不全が回避されるとの観測から、NYダウなどが一時急上昇したのです。
実際、同政権のもとで、コロナウイルス対策や家計・企業への追加支援が、早めに実行されるでしょう。それらの景気押上げ効果は増税などの悪影響を上回る、との見方が、株高の背景にあります。よって、トランプ氏があおった米国内の不和にもかかわらず、米国株の展望は、必ずしも暗くありません。
図表入りのレポートはこちら
https://www.skam.co.jp/report_column/topics/
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