侮れないかもしれない「トルコ発」の不安連鎖

2018/08/17

今週の国内株市場ですが、これまでのところ荒っぽい展開となっています。日経平均の値動きを辿ってみても、週初の13日(月)に前日比440円安の22,000円割れでスタートしたかと思えば、翌14日(火)は今年3番目の上昇幅(498円)で急反発し、15日(水)は再び下落に転じて151円安、そして16日(木)は大幅安で取引が始まるなど、株価が揺れ動いていることが判ります。

 

こうした相場の慌ただしさの背景には、先週開催された日米閣僚級のFFR(貿易協議)で合意に至らずに次回の交渉に持ち越しとなったことや、トルコの通貨リラが急落したのを受けて、新興国をはじめとする世界経済への影響を警戒視する動きが挙げられます。

 

もっとも、この期間の東証1部の売買代金は2兆5,144億円、2兆533億円、2兆402億円と、売買自体は盛り上がっていません。お盆休み期間で商いが閑散となりがちな中で見せた値動きの大きさと捉えれば、さほど心配要らないと考えることもできますが、とはいえ「トルコ発」で高まった今回の不安は侮れないかもしれません。

 

元々、トルコを含めて新興国に対する不安は燻っていて、米金融政策の出口戦略(利上げ)に伴う、ドル高と新興国の通貨安が進んでいる状況でした。これまで金融緩和で新興国に流れ込んでいた資金の流出や、ドル建て債務の負担増、ドル建てで取引される資源(原油)コストが高まるなど、新興国経済へ悪影響をもたらすというものです。

 

例えば、公的債務の海外依存度の高いアルゼンチンは緊急利上げを実施するなど、自国通貨安を食い止めるための手段を講じていますが、同じく債務の海外依存度が高いトルコについては、エルドアン大統領が利上げに否定的な姿勢をとっています。そのため、トルコは何かきっかけがあれば加速度的に通貨安が進行しやすい不安定さを抱えていました。

 

今回、そのきっかけとなったのは米国との対立でした。2016年に発生したトルコのクーデター未遂事件に関わったとして、米国人牧師がトルコ当局によって拘束されたことを発端に、牧師の解放を求める米国とそれに応じないトルコとの関係が悪化し、8月のあたまに米国がトルコに経済制裁を実施したことで一気に緊張が高まりました。

 

米国とトルコについては、これまでの中国などとは異なり、交渉や落ち着きどころといった微妙な「間合い」を探ることなく、お互いにファイティングポーズで一気に詰め寄ってきた印象があるほか、地理的にもトルコはNATOの加盟国で米国の安全保障の面で重要であること、中国の経済政策プラン「一帯一路」構想の要所に位置していることもあり、今後中国やロシア、中東諸国が関与してきて状況が複雑化してしまう可能性もあります。

 

そのため、事態の早期解決は難しいのかもしれません。

 

 

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