日銀の金融政策「副作用」の裏にあるもの
今週の国内株市場は、日銀金融政策決定会合に注目が集まる中で始まりました。ここまで日銀の会合への関心が高まったのは久しぶりです。その背景には、報道記事をきっかけに「日銀が会合で金融政策を見直す」という観測が高まったことにあります。
具体的なポイントとして、「ある程度の金利上昇を容認するのではないか?」、「日銀が購入している指数連動型ETFのウエイト配分をTOPIX重視に傾けるのではないか?」などが挙げられたのですが、実際の会合では、ほぼポイント通りの内容が決定され、事前の想定を上回るサプライズはありませんでした。
また、日銀は今回の決定について、現行の金融緩和策を継続する際の枠組みを強化するためのものと強調しています。つまり政策スタンスの変更(出口戦略)ではないとアピールしています。
決定事項の詳細は他の解説記事に譲りますが、何はともあれ、今回の決定は日銀の金融政策によってもたらされた「副作用」への対処や、出口戦略への意識の高まりによる金融市場の株安・円高への意識が滲み出ています。これを受けてか、会合後の8月1日(水)の市場は株高・円安で反応しています。
日銀の金融緩和政策がスタートしてかなりの時間が経ちますが、未だ目標として定めている物価水準を達成できずにいます。それに伴って、「結果が出るまでもっと緩和のアクセルを踏み込め」という意見と、「副作用の影響が心配だから政策の見直し・修正を行うべき」という意見の議論も長い時間行われてきましたが、最近は副作用を懸念する見方が優勢になっている印象です。
金利引き下げや量的緩和などの金融緩和策のロジックは、「緩和によって資金の調達コストが下がり、経済活動に資金が流れて景気が良くなり、所得や消費が増えることで需要が拡大し、それによって物価上昇圧力が高まる」というものです。
リクツとしては間違っていないのですが、金融政策のカギとなる金利は、資金の需要側でみれば調達コストである一方で、資金の供給側から見ればインセンティブになっている点が重要です。経済活動には資金が必要ですが、資金の出し手としては、貸している間の時間的価値や、リスクなどに相当するリターンがないと、資金を貸し出す気になりません。
その金利が、日銀の金融政策によって低金利どころかマイナス金利が一部で導入されています。マイナス金利は需要側から見れば理に適っているのかもしれませんが、供給側にとってはインセンティブがペナルティーに姿を変えてしまう理不尽な面を持っているわけです。
確かに、銀行の経営をはじめ保険や年金の運用難など、金融機関が苦境に追い込まれたり、国債の取引市場の機能不全状態に陥ったり、ETFを通じて株式を買い上げることによる、株価の正当な評価の歪みや浮動株の減少、株主構成の存在感など、日銀の金融緩和政策による副作用への懸念は無視できない状況になっており、それ故に今回の決定に至ったと言えそうです。
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