足元の「相場急落」がもたらしたもの

2018/02/09

今週の国内株市場ですが、荒れ模様の展開が続いています。日経平均は週初の5日(月)に592円安、6日(火)に1,071円安と、わずか2日間で1,600円を超える下落を見せました。翌7日(水)は反発したものの、終値ベースでは35円高にとどまり、取引時間中に700円高の場面があったことを踏まえると微妙です。8日(木)の取引も上昇してスタートしていますが、落ち着きを取り戻したと判断するにはまだ自信が持てない状況となっています。

 

足元の株価の下落幅が大きくなった背景は、「適温相場が続く」というこれまでの相場見通しの前提が揺らいでしまったことによって、我先にと手仕舞い売りが出たことをはじめ、これまでの株高に対する利益確定売りのタイミング、週末に控えている国内株価指数デリバティブ取引(mini先物・オプション)SQへの思惑、下げが下げを呼ぶ投げ売りなどが重なったことによるものと思われます。コンピューターによる「アルゴリズム取引」の機械的な売りが集中したことも影響しているという見方もあります。

 

また、売りのきっかけとして米国金利の上昇が挙げられますが、では、金利上昇によって実体経済に何か具体的な影響が出はじめたかというと、まだその状況ではなく、観測が先行している面が強いと言えます。経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)はまだしっかりしているという見方も多く、需給的な売買が一巡すれば、思ったよりも早く相場が下げ止まり、反発する展開も有り得ます。もっとも、株価は経済の先行指標でもありますので、足元の値動きが「相場の終わりの始まり」となる可能性はありますが、少なくとも現時点では、下げ幅のインパクトそのもので弱気判断をする必要はないと思われます。

 

とはいえ、足元の株価急落で相場のムードが悪化したのは間違いありません。乱高下が落ち着いたからといって、これまでのような「適温相場」が復活するシナリオは描きにくく、強気に傾くには新たな買い材料とストーリーが必要で、目先のポイントは「株価がどこまで戻すか?」になりそうです。

 

短期的な株価の上げ下げを捉えて利益を狙うのであれば、面白い局面と考えられますが、中期的な押し目買いを狙うのであれば少し注意が必要かもしれません。相場解説の記事やコメントでは、「相場急落によって、PER(株価収益率)が低くなったので割安感が出てきた」という指摘が増えてきました。実際に、日経平均の予想PERは6日の取引終了時点で13倍台後半となっています。これは、昨年9月から始まった上昇相場のスタート時の水準まで低下したことになります。急落前のPERは17倍台半ばでしたので、確かに割安になっているのは間違いありません。

 

PERは「株価÷1株あたり利益」で計算され、企業の稼ぐ力(利益)と株価を比較したものになります。厳密には「これから稼げそうな」利益を株式市場は織り込んで行くことになりますが、その将来の利益に対する期待が高いほど、高いPERが許容できることになります。ついこの前までの適温相場ではその期待はかなり高かったと思われ、その際に示したPERが17倍台半だったわけですから、その適温相場の前提が揺らいでいる現状では、PERの水準がある程度は戻せても、これまでと同じところまで上昇できるかについては、ややハードルが高く、思ったよりも時間がかかってしまう可能性があります。

 

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