国内外の長期金利上昇とマイナス金利「深堀り」観測
今週の国内株市場ですが、日経平均は先週とは反対に一段安となるスタートを見せ、軟調な展開が目立っています。先週末に大幅安となった米NYダウの流れを受けての格好ですが、その背景にあるのは日米欧の長期金利が揃って上昇したことにあります。
米国が利上げ観測に揺らいでいることに加え、先週のECB理事会では金融緩和(国債購入)の期限延長が見送られたこと、いよいよ来週に控えた日銀金融政策決定会合を前に、黒田日銀総裁や、日銀会合メンバーから、マイナス金利の副作用やイールドカーブの修正発言が相次いだことが影響しています。金融政策の正常化に向っている米国は経済環境が長期金利を動かす材料になっていますが、正常化に程遠い日欧については、中銀の金融政策の限界が意識され始めていることが材料になっているため、少し「タチ(性格)が悪い」金利上昇の可能性があります。
そんな中、今週に入って、「次回の日銀会合では、金融緩和の軸にマイナス金利政策の深掘りを据える方針」という趣旨の報道がありました。報道での主なポイントは、(1)金融緩和の縮小はしない、(2)マイナス金利政策を軸にして、一段の深堀りも検討、(3)マイナス金利の副作用に配慮し、長短国債の金利差拡大を促す、(4)物価上昇目標2%は維持するが、期間目標の2年間は事実上撤回、(5)外債購入は検討しない、というものです。
日銀としては、「マイナス金利によって収益が圧迫される金融機関からの不満に配慮するよ」という意図が感じられますが、そもそも今年1月末に決定されたマイナス0.1%金利政策の適用対象は日銀当座預金の一部(新たに積み上がる政策金利残高)のみでした。
マイナス金利導入決定と同時に、日銀からQ&A形式の『本日の決定のポイント』というものが公表されたのですが、その中に「金融機関の収益を悪化させるのではないか?」、「マイナス金利の一部適用だけでは、効果がないのでは?」という問いがあります。それぞれの問いに対する日銀の見解を簡単にまとめると、「金融機関の収益や金融仲介機能に悪影響を及ぼす可能性があるからこそ、マイナス金利の適用対象を一部にした」、「適用対象が一部分とはいえ、新たに積み上がっていく当座預金残高分はマイナス金利が適用されることになるため、金融市場はそれを前提に金利や相場が形成されていくため、効果はある」というものでした。
日銀の言う通り、一部のマイナス金利適用によって、実際に短い年限の国債だけでなく、長期金利の利回りも低下することになりました。ただし、10年国債利回りがマイナスで定着し、20年国債利回りも一時マイナスになるなど、長期金利のほうが大きく低下してしまったことで、金融機関の収益圧迫が懸念され始めます。日銀の想定以上に「効果が出過ぎてしまった」可能性があるわけです。
そのため、次回の日銀の決定が思惑通りの効果を得られるのかどうか、かなり慎重に見極めていく必要があり、会合が終了した後も不透明感は払拭されないかもしれません。
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