日本株の上昇余地

2016/07/01

「Leave(EUからの離脱)」を選択した英国民投票が世界中のマーケットを掻き回した先週末の余韻を引きずりながら迎えた今週の株式市場ですが、ひとまず戻りを試す展開が続いています。29日(水)取引の日経平均高値(15,626円)で、急落した先週金曜日(24日)の下げ幅のほぼ半分の水準を回復し、翌30日(木)もさらに値を戻す格好で取引をスタートしています。

英国の国民投票の結果は大方の想定を覆すものだっただけに、相場の初期反応は大きなインパクトとして受け止められたものの、G7の財務相・中銀総裁が緊急電話会議を開くなど、主要各国の協調的な対応姿勢が素早く示されたことや、今後についてもこれからの協議次第の面もあるため、一巡した後はひとまず様子を窺っている状況と言えます。

確かに、EUという欧州の枠組み自体が変わるかもしれないという歴史的な出来事になる可能性があり、先行きの不透明感は強まってはいますが、リーマン・ショック時のように、金融機関の破綻をきっかけとした世界中の金融システムがパニック状態に陥るという事態にはなっていません。関係国の動向や影響を見極めながら、市場は不安と落ち着きを繰り返す展開がしばらく続きそうです。

国内でも、政府と日銀が緊急会合を27日と29日に立て続けに開催しました。具体的な対応策が出てきたわけではありませんが、こうした姿勢を見せるだけでも市場を落ち着かせる効果はあったと思われます。また、29日(水)の取引では、不動産株や建設株などが買われていたため、補正予算編成による財政出動や追加金融緩和などの政策期待も相場の支援材料になっているようです。

まもなく、参院選の投開票が行われますが、現時点では与党の勝利が予想されています。予想通りであれば、政府は参院選終了後のタイミングで大規模な財政支出を計画すると思われますが、消費増税の延期決定や税収減が見込まれる中で財源をどうするのかという議論が出てくることが想定されます。日銀の国債買い入れで財源を賄うことなどが考えられますが、財政再建目標から遠のくことになりますし、いわゆる「ヘリコプター・マネー」と受け止められてしまう可能性があります。

また、追加金融緩和については、一部で限界論が囁かれていることや、すでに導入したマイナス金利へのネガティブな評判もあります。そのため、実際に追加緩和が実施されても、「諸手を挙げて歓迎」とはならない可能性もあります。

そのため、政策決定までの期待感はしばらく相場を支えると思われますが、内容次第では「アベノミクスへの失望」に転じてしまう火種を抱えている点があり、日本株の上昇余地は今のところあまりないのかもしれません。

 

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