AIバブルの黄昏か? 米国株市場に忍び寄る「3つの影」
今週の株式市場ですが、波乱含みだった先週の値動きが落ち着き、国内では日経平均が51,000円台をうかがう状況の中、TOPIXが12日(水)の取引で最高値を更新する動きを見せるなど、高値圏での推移が続いています。
もっとも、11日(火)の取引では日経平均が下落、TOPIXが上昇するといった具合に、ちぐはぐな場面もあり、先週に揺らいだAI相場の余韻を残す格好となっています。また、今週はソフトバンクグループの決算が注目されていましたが、決算を受けた12日(水)の同社の株価は3.46%安で反応しています。
米国株市場でも同様に、これまでAI・半導体関連株が市場全体を牽引してきた「一本足打法」が足元で大きく揺らいでいます。米主要株価3指数(NYダウ、S&P500、ナスダック総合)の株価水準は高値圏を維持しているものの、まだ楽観はできず、「3つの影」が忍び寄っています。
第一の影は「AI相場」そのものへの懐疑論です。クラウドサービス企業の米コアウィーブが今週発表した決算では、好調な売上に反して供給網の遅延懸念や多額の借入によるキャッシュ減少が嫌気されて株価が急落しました。これは、AIの需要が「本物」であったとしても、そのインフラを支えるビジネスモデルが極めて脆いバランスの上に成り立っていることを露呈させました。
また、空売りで知られる米投資家マイケル・バリー氏の発言もAIブームに冷や水を浴びせています。バリー氏は、大手テック企業がAIサーバーの「減価償却(耐用年数)」を不自然に長く設定し、会計上の利益を「合法的」に水増ししている可能性を強く指摘しており、11月25日にその詳細を公開すると予告しています。そのため、来週19日(水)に予定されているエヌビディア決算と同様に、バリー氏の続報の内容によっては、さらにAI相場が荒れるかもしれません。
次に、第二の影は「ローテーション」の持続性です。今のところ、 AI株から逃げ出した資金は、今のところ製薬(メルク、アムジェンなど)やバリュー株、高配当株へと向かい、NYダウが最高値を更新する場面を見せるなど、資金が株式市場内で循環している格好となっています。しかし、これらのディフェンシブ・セクターだけで巨大な米国市場の活力を維持できるとは考えにくく、この資金移動がどこまで市場全体を支え続けられるかは不透明です。
そして、第三の影は、水面下で広がる「隠れたリスク」です。 市場の目に見えにくい部分では信用不安が静かに進行しています。例えば、ブラックロックが貸し付けていたプライベート・クレジット(銀行以外の融資)案件がデフォルトし、評価額ゼロとなる事態が発生してことが判明し、こうした動きが今後も拡大する可能性が指摘されています。 さらに、ようやく解除の見通しとなった米政府機関の閉鎖は、経済活動を停滞させただけでなく、雇用統計などの重要指標の発表を遅らせ、市場の「視界」を奪っています。トランプ政権が掲げた「製造業の国内回帰」といった政策も、政治の混乱の中で目に見える成果を上げておらず、実体経済の基盤は投資家の期待ほど強固ではありません。
そのため、目先の株式市場は、政府機関の再開後に発表される経済指標の内容と金融政策の見通し、そして、バリー氏が投下する「11月25日の爆弾」という2つの大きな不確実性に直面している中、しばらくはリスクを冷静に点検しつつ、落ち着きどころの良い株価水準を探って行くことになりそうです。
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