これから重要になるのは中華AIよりも米国の金利?

2025/01/31

1月最終週となる今週の株式市場ですが、これまでのところ、いわゆる「ディープシーク(DeepSeek)・ショック」に揺れ動いた印象が強い展開となっています。

安価で開発、かつ高機能を謳うAIモデルが中国の新興AI企業から登場したことによるインパクトは大きく、27日(月)の国内株市場では、ソフトバンク・グループ株が8.32%安、続く28日(火)の米国株市場でもエヌビディア株が16.9%安と、大きく下落したほか、関連する銘柄の中にも下落が目立つものが増えました。

果たして、このディープシークがAI開発の世界を変える革新的な「ゲームチェンジャー」となり得るのかについては、まだ判断できる材料が足りない状況ですが、米国からの中国への制約が厳しい環境の中、低コストで米国のAIモデルに劣らないものが短期間で開発されたことによって、「多額の資金と最先端の技術が必須」とされてきたAI開発のこれまでのイメージに一石を投じたことは間違いありません。とりわけ、先週に「スターゲート計画」という巨額のAI投資プロジェクトが米国で立ち上がり、日米の関連銘柄の株価が急上昇していたタイミングだったことも、株式市場の下落に大きく影響したと思われます。

さらに、足元では、このディープシークに対して盗用疑惑が浮上し、調査が開始されたと報じられたほか、AI技術の汎用化についても、「目先の先端半導体需要にとって逆風」という見方が出てくる一方で、「多くの分野・企業でAIの利用が活発化し、中長期的にはプラス」といった見方も出るなど、様々な意見が交錯しています。これに加え、中国企業のアリババが、ディープシークの性能を上回るAIモデルを開発したと発表するなど、状況はちょっとしたカオス状態となっていて、株式市場はしばらく目先のニュースに振り回される場面が増えるかもしれません。

ただ、少なくとも、AIを開発する側と利用する側のメリットやデメリットをはじめ、AIをどのように活用・ビジネス化していくのか、AI開発における学習(訓練)と推論の違い、投資に見合う収益化への視線が厳しくなることなど、今回のディープシーク・ショックをきっかけに、投資家のAIに対する理解度が深まり、AI相場はこれまでのように、「AIに多くの投資をするよ」というだけで対象銘柄の株価が大きく上昇していくという段階から、次の局面へと移行しつつあると思われます。

また、今週は米国でFOMC(連邦公開市場委員会)も開催されました。通常であれば多くの注目を集める金融政策イベントですが、今回については、政策金利の据え置き見通しが多く、実際にその通りになったこと、そして、ディープシーク・ショックの影響もあって、FOMCの結果が公表された29日(水)の米国株市場や、それを受けた30日(木)の国内株市場の動きは限定的となっています。

確かに、今後の米国の金融政策は、景気動向だけでなく、トランプ政権の政策運営も見極める必要があり、現時点で積極的に先行きを織り込んでいくのは難しい状況です。特に、トランプ大統領は米FRB(連邦準備理事会)に対して、批判や利下げを要求することが考えられる一方、そのトランプ政権の政策はインフレを招きかねない要因も持っているといった具合に、少なからず矛盾を抱えています。トランプ政権は、これから始まる予算審議や3月半ばに期限を迎える「つなぎ予算」への対処で米議会と向き合うことになります。その動向次第では、米国金利が再び上昇することも想定されますので、ここから重要になってくるのは、米国の金利動向になってくると思われます。

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