下落基調の株式市場「落ちるナイフ」は掴むべきか?

2023/10/06

10月相場入りとなった今週の国内株市場ですが、これまでのところ、下げが目立つ場面が多くなっています。日経平均は4日(水)の取引終了時点で、5日連続の下落となり、節目の31,000円水準を下回っています。また、この5日間の下げ幅合計は1,800円を超えています。

確かに、短期間で株価が大きく下げていますが、今週に入ってからの動きを確認すると、週初の2日(月)が32,000円割れの水準、翌3日(火)が8月18日の直近安値(31,275円)、そして、9日(水)が、この8月18日安値と、さらにその前の安値(7月12日の31,791円)を結んだ下値ラインの延長線上が意識されており、テクニカル分析的には、下値の目安を探りながら下落していたことが分かります。

さらに下値を探るのであれば、200日移動平均線あたりが目安となりそうです。株価と200日移動平均線の関係を2015年から辿っていくと、株価は200日移動平均線からの乖離率が20%ぐらい乖離したところで天井をつけ、その後は乖離率を縮小させていくパターンを繰り返しています。直近では、6月16日に20%まで乖離が進み、現在に至るまで時間をかけて乖離が縮小してきています。9日(水)時点では2%まで乖離が修正されていますが、現在の200日移動平均線が節目の30,000円辺りにちょうど位置しているため、下値の目安としては強く意識されそうです。

このように、株価が大きく下落している割に、下げ方としては意外と冷静な面があるため、目先で株価が反発する動きも出てきそうです。では、ここでの押し目買いが報われるのかと言えば、中長期的にはまだ微妙かもしれません。

その理由のひとつとして、「海外勢が再び日本株を買ってくれるか?」が挙げられます。最近になって、ドル建ての日経平均が、米著名投資家のウォーレン・バフェット氏が4月に来日し、日本の再投資発言をする前の水準まで下落しているという解説や記事が増えてきています。円安の進行は日本株の上昇材料ではありますが、外貨を日本円に変えて日本株に投資する海外投資家からすれば、為替差益の面で円安はマイナス材料です。

日本株は9月の前半にTOPIXがバブル後の高値を更新するなど、堅調さが際立っていた場面がありましたが、その背景のひとつには、日銀の金融政策の修正観測が影響していた面があります。緩和政策の修正は、長年にわたる日本のデフレ体質からの本格的な脱却や、為替も円高に向かっていくという意味もあるのですが、先日の日銀会合では政策の現状維持が決まっただけでなく、今後の政策の修正もやるのかやらないのかハッキリしないものとなりました。植田総裁の記者会見などで、データ次第で確実なことは言えないものの、政策修正への意欲と利点をもう少しアピールできていれば、現在の状況は違っていた可能性があります。

そして、もう一つは国内外の株式市場の割高感です。日米の主要株価指数の株式益回りと米10年債利回りのスプレッド(差)があまりない状況で、株式市場は相対的に割高感が強くなっています。今週に入って米10年債利回りが4.8%まで上昇しており、リスク資産の株式よりも安全資産の債券の方に魅力がある状態となっています。月の半ばから本格化する日米の決算シーズンで企業がしっかり利益を確保し、強いガイダンスを示していくことが、継続的な株価上昇に必要な要素になりそうです。

したがって、短期的な反発ねらいの買いなら妙味があるかもしれませんが、中長期的な姿勢であれば、もう少し見極めてから買いを入れても遅くはないかもしれません。

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