中国の「リオープン」期待はホンモノか?

2023/02/03

「月またぎ」となった今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ27,500円水準を意識した重たいもみ合いが目立っています。

注目イベントのひとつである米FOMC(連邦公開市場委員会)を通過した2月2日(木)の取引も株価水準があまり変わらないスタートとなり、状況が大きく変わることはありませんでしたが、逆を言えば、足元の株価反発基調も維持され、引き続き、経済指標や企業業績、インフレの動向をにらみながら、上値をトライできるかが焦点になります。

また、足元の相場を支えている要因のひとつが、中国のリオープン(経済再開)期待です。2月1日(水)時点の中国株市場を見てみると、上海総合指数や香港ハンセン指数といった株価指数が、2021年2月の高値から直近の安値の下げ幅に対する「半値戻し」を達成するなど、ここ数カ月のあいだで順調に戻りを描いています。

中国株の反発スイッチを入れたのは、中国当局が昨年11月終盤に「ゼロコロナ政策」の解除を発表したことがきっかけとなりました。さらに、不動産規制の緩和をはじめ、IT企業への締め付けや外資導入のためのビジネス参入のハードル引き下げ方針を示したことなども追い風となりました。

こうした中国経済の持ち直し期待は今週公表されたIMF(国際通貨基金)の世界経済見通しにも表れています。2023年の中国のGDP成長率予想はプラス5.2%となり、前回から0.8ポイントと大きく上方修正されました。

その一方で、政治面では米中対立の深化など、気をつけなければならない問題もあります。最近も、半導体の対中輸出制限で米国・日本・オランダが連携していく方針が話題となりました。状況によっては、中国に工場を持つ企業、例えばアップルやテスラをはじめとする米国企業のほか、国内企業にも影響が出てくるかもしれません。

また、中国では不動産投資に依存した経済成長モデルの限界とそれに伴う諸問題といった火種も燻っています。2020年の秋ごろから経営不安が高まった中国恒大集団の影響は、不動産業界だけでなく、地方政府の財政や金融機関のバランスシート不安に及び、さらに状況が悪化すれば鉄道事業などの他の債務問題に飛び火してしまう可能性もあり、根深いものがあります。

しかもこれらは「コロナ前」から抱えている問題であり、ゼロコロナ政策の解除で一気に解決するものではありません。むしろ、ゼロコロナ政策で状況を悪化させ、コロナ禍を経て中国そのものの対するカントリーリスクも高まった状態での経済再開期待であるということは意識しておいた方が良さそうです。

したがって、3月の全人代に向けて政策期待が高まるなど、中国株はしばらく力強い動きをする可能性はありますが、中長期的には慎重にウォッチする必要があると言えます。

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