株価の上振れ期待も楽観は禁物か?

2023/01/13

連休明け、そして「アフター米雇用統計」となった今週の国内株式市場ですが、日経平均は週初の10日(火)に一段高で26,000円台を回復し、翌11日(水)の取引でも26,500円をうかがう動きを見せるなど、これまでのところ値を戻す展開が目立っています。

株価上昇のきっかけとなった米12月雇用統計の内容を簡単にまとめると、非農業部門雇用者数は予想よりも強かったものの、前回からは鈍化したほか、平均時給の伸びについても前回や予想を下回る結果でした。

米FRB(連邦準備制度理事会)は、インフレの要因を、原材料などの「モノ」の価格、家賃などの「住宅関連」価格、賃金などの「サービス」価格に分けて捉えていますが、今回の米雇用統計の結果によって、市場では「インフレの減速がモノの価格から住宅価格、そしてサービス価格へと拡大しつつあるのでは?」という見方が高まったと考えられます。また、雇用統計と同日に公表された米12月ISM非製造業景況感指数が、景気の分岐点とされる50を下回る結果となり、景況感が悪化したことも、金融引き締めペースの鈍化観測を強めることにつながったようです。

さらに、今週12日(木)に予定されている米12月CPI(消費者物価指数)が、インフレの鈍化を示す結果となれば、さらなる株価の上昇が期待できるかもしれません。

とはいえ、CPIの結果が期待とは反対にインフレの強さを示せば、再び売りに押される展開も十分にあり得ますし、先ほどの米雇用統計やISM非製造業景況感指数も含めて、足元で発表される米経済指標は12月分が中心ですが、米国ではその時期に大寒波が襲来していた影響を考慮すると、12月分の経済指標が示す景況感の悪化は一時的にとどまる可能性もあります。そもそも雇用統計における平均時給の伸びや、インフレ指標における物価上昇率など、結果自体は確かに鈍化傾向が目立ち始めていますが、水準自体はまだまだ高い状況が続いています。

そして、まもなく日米の企業決算の発表シーズンを迎えます。企業決算に対しては、「米金融引き締めによる景気悪化で国内外の需要が減少するのではないか」「一気に緩和へとかじを切った中国のコロナ規制によって、感染者が急激に拡大し、サプライチェーン(供給網)の混乱がまだ続くのではないか」といった警戒感がくすぶっており、企業業績の動向で実際の影響を見極めていくことになります。

したがって、目先で株高が目立つ展開となっても、本格的な株高シナリオを描くのはもう少し先になりそうですし、足元の米国株上昇の背景(インフレ鈍化・景況感悪化による米金融政策の引き締め緩和期待)は、為替の円安修正を伴いやすいほか、日銀サプライズ以降の不透明感や来週の日銀金融政策決定会合を控えた様子見などもあり、米国株ほど日本株が上昇しないといった場面が増えるかもしれません。

目先は大きな株価上昇も期待できそうな状況ではありますが、足元で演じる値動きの大きさが必ずしも中長期のトレンドにつながるわけではないことも押さえておく必要がありそうです。

楽天証券株式会社
楽天証券経済研究所 土信田 雅之が、マクロの視点で国内外の市況を解説。着目すべきチャートの動きや経済イベントなど、さまざまな観点からマーケットを分析いたします。
本資料は情報の提供を目的としており、投資その他の行動を勧誘する目的で、作成したものではありません。
銘柄の選択、売買価格等の投資の最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようにお願いいたします。
本資料の情報は、弊社が信頼できると判断した情報源から入手したものですが、その情報源の確実性を保証したものではありません。本資料の記載内容に関するご質問・ご照会等には一切お答え致しかねますので予めご了承お願い致します。また、本資料の記載内容は、予告なしに変更することがあります。

商号等:楽天証券株式会社/金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第195号、商品先物取引業者
加入協会:
  日本証券業協会
  一般社団法人金融先物取引業協会
  日本商品先物取引協会
  一般社団法人第二種金融商品取引業協会
  一般社団法人日本投資顧問業協会

このページのトップへ