ウクライナ情勢と中国全人代
今週の国内外の株式市場も、引き続きウクライナ情勢の影が覆う展開となっています。日経平均も下値を探る展開でスタートし、9日(水)の取引終了時点の日経平均は27,417円となり、連日で昨年来安値を更新する展開となっています。10日(木)の取引は大きく反発してスタートしていますが、本格的に戻りを試す展開につながるかは微妙なところです。
ウクライナ現地の状況が流動的であることに加え、ロシアに対する西側諸国の経済制裁が段階的に強化される中で資源価格が上昇傾向にあり、事態が長期化してしまう影響、いわゆるスタグフレーション(インフレ+景気後退)を不安視する動きが株安の背景となっています。
今後、一時停戦などの動きがあれば株式市場も素直に戻りをうかがう展開になると思われますが、警戒感が燻り続ける以上、経済制裁もすぐに解除されるとは限らず、余程の改善が見られない限り、金融市場が事態の長期化によるスタグフレーションを織り込む動きを覆せないかもしれません。これまでNATO(北大西洋条約機構)に非加盟だった国が加盟を検討し始めたり、日本国内でも安全保障の在り方を根本から見直すべきという議論が浮上したり、企業もサプライチェーンや取引先の選定を迫られているように、すでに「一地域の地政学問題」ではなくなっています。
そんな中、中国では先週末の5日より全人代(全国人民代表大会)が開催されています。毎年3月に行われる全人代では、開幕時の首相の演説(政治活動報告)で示される当年のGDP成長率目標が注目されるのですが、2022年の目標は+5.5%前後となりました。昨年(2021年)の「6%以上」からは下方修正されてはいますが、IMF(国際通貨基金)予想の4.8%よりは高い数値となっています。
また、今回の首相演説において、中国経済の足を引っ張るのではとされていた「共同富裕」というキーワードが1回しか登場しなかったことも注目されました。ここ一年はこの共同富裕の旗印の下、様々な分野で規制や圧力が強化されてきましたが、不動産業界の債務問題が噴出したり、コロナ禍に対する「ゼロコロナ政策」の影響もあって、中国経済が想定以上の景気減速に見舞われています。そのため、中国当局は、秋に控える共産党大会を前に、政治理念よりもひとまず経済安定を優先させる方向に舵を切ったと思われます。
実際に、今回の演説においては、中国経済は需要の縮小やサプライチェーンの混乱、(先行きへの不安と期待の後退という「三重の圧力」にさらされていると述べられているほか、懸念されていた不動産税の導入についても反対論が根強いせいか、具体的な言及はなく、高いGDP成長率目標を達成するために、減税や補助金、規制緩和、金融政策のさらなる緩和も想定されそうです。
さらに、ウクライナ情勢による原油高も中国経済の重石となるほか、中国がロシアのウクライナ侵攻を非難せず、逆にロシアを支援する姿勢を示すと、今後、米欧各国からの圧力も強まることも考えられます。すでに着手している不動産債務問題や経済安定を優先させようとする中、海外からの資金調達面で影響が出ることを踏まえれば、地政学的に心配されているような中国がロシアを積極的に支援するという行動はひとまず控える可能性が高いと考えられます。
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