株価の戻り基調と「強気の罠」への警戒

2022/02/11

週末の祝日を控え、4営業日となった今週の国内株市場ですが、日経平均はこれまでのところ反発した先週からの流れを引き継ぎ、ジワリと戻り基調が感じられる推移となっています。

米国ではFOMCを通過し、GAFAMといった注目の主要企業の決算が一巡する中、今週は国内企業の決算を手掛かりとする動きが目立っています。好業績を発表した銘柄が物色されているほか、8日(火)に発表したソフトバンクグループの決算はネガティブな要素が多いものとなりましたが、翌9日(水)の取引では、材料の出尽くしからか5%を超える上昇という初期反応を見せており、全体として1月の株価急落からの落ち着きをうかがうような展開です。

テクニカル分析的にも、10日の取引開始時点での日経平均とTOPIXは25日移動平均線を上抜け、ひとまずは最初の「ハードル超え」はクリアしています。さらに、この先に控える75日・200日移動平均線もトライできるかが注目されます。

しばらくは米金融政策やインフレ動向をにらみつつ、金利の変化に敏感に反応する相場地合いが続きそうですが、日米の株式市場では、主力の大型株をはじめ、金利上昇による利ザヤ改善期待で金融株が上昇するなど、「買えるもの」に資金が向かう動きも出ています。

また、米金融政策の正常化ペースの加速に対する警戒は、株価急落という格好で先取りして織り込んだ可能性があるほか、前回の米金融政策正常化時にも株価はしっかり上昇していたという経緯もあり、目先は強気ムードが再び優勢になる展開も想定されます。

ただし、注意しておきたいのは、こうした足元の株価復調の動きが「強気の罠」であるかもしれないことです。本格的な下落相場の初期段階に株価が大きく反発する場面を見せ、「やっぱり相場は強い」と思わせたかと思えば、その後に下落に転じるという値動きがよく見られます。

実際に、米金融政策の正常化については前回と今回とで大きく異なっています。そのひとつとして挙げられるのは利上げの背景です。前回は景気過熱を抑制することが利上げのメインの理由でしたが、今回はインフレ対応の方がメインの理由となっています。今週も10日(木)に米1月消費者物価指数(CPI)が発表されますが、ここ最近のCPIからは物価上昇傾向が継続していることが示されており、過去3回の米株市場はCPIの発表後に下落する動きを見せています。さらに、原油価格の高止まりや、米企業アマゾンなどの決算において、人件費を含むコスト増による収益圧迫もアナウンスされており、インフレをキーワードとした不安が燻っています。

また、正常化のペースも違います。前回は2014年1月にテーパリングが開始されて、同年10月に終了し、利上げの開始はその14カ月後の2015年12月でした。QT(金融引き締め)については、さらにその22カ月後の2017年10月に実施されており、かなりの時間を掛けていましたが、今回はテーパリングの終了と同時期に利上げが始まり、QTも今年中という見方が主流となっているため、かなりのハイペースです。そのピッチの速さが景気や企業業績、財務などに悪影響を与える可能性があります。

そのため、しばらくは株価が上げ下げする展開が想定され、中長期スタンスでの買いのチャンスはあまり慌てなくても何度か訪れることになりそうです。

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